・粒子画像流速測定法注1)を用いて、ナノスケールの極めて小さなすき間内を流れる液体の流動を計測した。
・固体表面で生じる「すべり」が場所によって異なることを明らかにし、その局所的な分布から液体が固体表面に及ぼす力を推定した。
・従来の力測定から得られる「すべり長さ」が、局所的なすべりの単純平均ではなく、圧力の高い領域のすべりをより強く反映した有効値であることを解明した。
・流体デバイスや微小すき間を有する潤滑システムにおける界面流動の定量評価や設計指針の確立につながることが期待される。
名古屋大学大学院工学研究科の東 直輝 准教授、尾関 秀隆 博士後期課程学生らの研究グループは、固体表面間のナノメートルスケールのすき間(ナノすき間)を流れる液体について、局所的な流れから求めた「すべり長さ」と、流れによって生じるマクロな力から求めた「有効すべり長さ」の関係を明らかにしました。
固体表面に沿って液体が流れるとき、一般には表面上で液体の速度がゼロになると仮定されます。しかし、ナノスケールでは液体が固体表面に対して「すべる」現象が生じることがあります。このすべりの程度は「すべり長さ」によって表され、ナノ流体デバイスや精密機械の潤滑特性を理解する上で重要な指標です。
本研究では、蛍光ナノ粒子を液体中の目印として利用するナノ粒子画像流速測定法により、ナノすき間内部の局所的な流れを測定しました。この測定結果から、場所によって異なる局所的なすべり長さを求め、さらにその分布を用いて液体内部の圧力分布と「スクイーズ力」注2)を評価しました。さらに、従来の力測定から得られる単一のすべり長さは、実際の局所的なすべり長さの単純な平均ではなく、圧力の高い領域の局所的なすべりをより強く反映した有効な量として理解できることが示されました。
本成果は、ナノスケールの流れにおいて「局所的に起きている現象」と「装置全体で測定される力」との関係を理解する新たな手がかりとなり、流体デバイスや微小すき間を有する潤滑システムにおける界面流動の定量評価につながることが期待されます。
本研究成果は、2026年10月26日13時(日本時間)付、米国化学会が発行する学術誌『Langmuir』に掲載されました。
◆詳細(プレスリリース本文)はこちら
注1)粒子画像流速測定法:
液体中に微小な粒子を目印(トレーサー)として分散させ、その粒子の移動を画像から解析することで、液体の流れる速度を測定する方法。本研究では蛍光ナノ粒子を用いることで、ナノすき間内の局所的な流れを測定した。
注2)スクイーズ力:
液体を挟んだ二つの固体表面が互いに近づく際に、液体内部に発生する圧力によって、表面の接近を妨げる方向に作用する力。界面ですべりが生じると液体が外側へ流れやすくなるため、スクイーズ力の大きさも変化する。
雑誌名: Langmuir
論文タイトル: Linking Flow-Derived Local Slip Lengths to Force-Derived Effective Slip Lengths in Nanogaps
著者: Hidetaka Ozeki, Naoki Azuma, Kenji Fukuzawa, Kento Shimizu, Yuxi Song, Shintaro Itoh, Hedong Zhang
DOI: 10.1021/acs.langmuir.6c03687
URL: https://doi.org/10.1021/acs.langmuir.6c03687
大学院工学研究科 東 直輝 准教授, 主著者:尾関 秀隆(博士後期課程学生)
https://www.itoh-lab.org/