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生物学

2021.03.29

植物の卵細胞がつくられる様子を生きたまま観察することに成功 ~卵細胞をつくりだし受精を達成する仕組みの解明に期待~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM)の栗原 大輔 特任講師(JSTさきがけ専任研究者)、東山 哲也 教授らの研究グループは、横浜市立大学木原生物学研究所の須崎 大地 日本学術振興会特別研究員、中部大学応用生物学部の鈴木 孝征 准教授らとの共同研究で、植物の雌の配偶子である卵細胞がつくられる様子を生きたままリアルタイムで観察(ライブイメージング)できるシステムを開発しました。被子植物は花の中で精細胞(動物での精子)と卵細胞(動物での卵子)が出会い、受精を行います。精細胞は花粉の中でつくられますが、卵細胞は胚珠と呼ばれる将来種子となる組織の中でつくられます。しかし、胚珠はめしべの奥深くに埋め込まれているため、これまで卵細胞がつくられる様子を生きたまま観察することはできませんでした。

研究グループは、以前開発していた胚珠培養技術を用いて、胚珠の中で卵細胞がつくられる様子を生きたまま映像として捉えることに成功しました。また、卵細胞や隣接する細胞を単離して、少数の細胞で発現する遺伝子を解析する手法を確立し、卵細胞に隣接する細胞が卵細胞へと細胞運命を変化させる様子を明らかにしました。

本研究成果は、卵細胞をつくりだし受精を達成する仕組みの解明や、育種・培養技術の開発につながると期待されます。

本研究成果は、2021年3月26日付(日本時間3月27日午前3時)米国科学雑誌『PLOS Biology』電子版に掲載されました。


【ポイント】

・ 植物の卵細胞がつくられる様子を生きたままリアルタイムで観察することに成功した。

・ 顕微鏡下で配偶子や助細胞を取り分けて、それぞれの遺伝子発現情報を解析する実験系を確立し、卵細胞に隣接する細胞が卵細胞のように変化していく様子を明らかにした。

・ 卵細胞を維持し受精を達成する仕組みの解明、育種・培養技術の開発への貢献が期待される。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【論文情報】

雑誌名:PLOS Biology

論文タイトル:Dynamics of the cell fate specifications during female gametophyte development in Arabidopsis (シロイヌナズナ雌性配偶体形成における細胞運命決定のダイナミクス)

著者:Daichi Susaki, Takamasa Suzuki, Daisuke Maruyama, Minako Ueda, Tetsuya Higashiyama, Daisuke Kurihara

(須崎 大地、鈴木 孝征、丸山 大輔、植田 美那子、東山 哲也、栗原 大輔)    

DOI:10.1371/journal.pbio.3001123                                    

 

 【研究代表者】

トランスフォーマティブ生命分子研究所 栗原 大輔 特任講師

http://www.higashiyama-lab.com/
https://researchmap.jp/7000006630