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国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院工学研究科の清水 一憲 准教授(責任著者)、山本 一貴 博士前期課程学生(筆頭著者)、本多 裕之 教授らの研究グループは、愛知医科大学神経内科 岡田 洋平 准教授らとの共同研究で、ヒト神経筋組織モデルをの開発に成功しました。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)やサルコペニア注1)など、多くの神経筋疾患ではにおいて発症メカニズムが完全には明らかになっておらず、有効な治療法がほとんどありません。

本研究ではは、こうした疾患の治療法開発に利用するためのもので、ヒト神経筋組織モデルを開発しました。新たに製作した細胞培養用マイクロデバイスを用いて、ヒト筋細胞で作った三次元筋組織注2)にをヒトiPS細胞由来運動ニューロン注3)のスフェロイド注4)と連結させ、同時に培養することに成功しました。これにより、運動ニューロンからの信号で培養筋組織の収縮を誘導し、その収縮力を測定することができました。さらに、運動ニューロンの細胞体注5)や軸索注6)、筋組織に対して、個別に薬剤を添加したり、物理刺激を負荷したりすることができることを実証しました。

本研究で開発した技術は、様々な神経筋疾患の発症メカニズムの解明や治療薬の開発に役立つことが期待されます。

本研究成果は、20212021年44月77日付で英国王立化学会が出版する雑誌『Lab on a Chip』に掲載されました。

本研究は、科研費の挑戦的萌芽研究、若手研究(A)、国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)、基盤研究(B)、新学術領域研究”分子夾雑の生命化学”及び、また公益財団法人カシオ科学振興財団、公益財団法人中谷医工計測技術振興財団の助成を受けたものです。
 

【ポイント】

・ヒト神経筋組織モデルの開発に成功した。

・運動ニューロンからの信号で動く筋組織を構築し、その収縮力を測定することができた。

・運動ニューロンの細胞体や軸索、筋細胞に、筋細胞に個別に化学刺激や物理刺激を加えられることを実証した。

・様々な神経筋疾患の基礎研究や治療薬開発への利用が期待される。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)サルコペニア:加齢により筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下した状態。

注2)ヒト筋細胞で作った三次元筋組織:ヒト筋細胞を足場となるハイドロゲルに混ぜて立体的に培養した組織。

注3)ヒトiPS細胞由来運動ニューロン:ヒトの人工多能性幹細胞を分化誘導して作製した運動ニューロン。

注4)スフェロイド:培養細胞が集まった小さな塊。

注5)細胞体:運動ニューロンの中で核などの細胞内小器官が集中し、樹状突起と軸索が会合する部位。

注6)軸索:ニューロンの細胞体からでる細長い突起。ニューロンの信号を伝える役割を担う

 

【論文情報】

掲載紙:Lab on a Chip

論文タイトル:Development of a Human Neuromuscular Tissue-on-a-Chip Model on a 24-Well-Plate-Format Compartmentalized Microfluidic Device

著者:Kazuki Yamamoto1, Nao Yamaoka1, Yu Imaizumi1, Takunori Nagashima1, Taiki Furutani1, Takuji Ito2, Yohei Okada2, Hiroyuki Honda1, Kazunori Shimizu1

1名古屋大学大学院工学研究科生命分子工学専攻

2愛知医科大学神経内科

DOI:DOI:10.1039/D1LC00048A

URL:https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2021/LC/D1LC00048A#!divAbstract

 

【研究代表者】

大学院工学研究科 清水 一憲  准教授

https://www.chembio.nagoya-u.ac.jp/labhp/life2/index.html