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生物学

2021.04.23

花粉管は核がなくても胚珠に辿り着く ~世界で初めて核を持たない花粉管の作出に成功~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所の東山 哲也教授らは、横浜市立大学の丸山大輔 助教、立命館大学の元村一基 助教らの研究チームとの共同研究により、モデル植物シロイヌナズナを用いることで、世界で初めて細胞質中に“細胞核”が存在しない花粉管を作出することに成功しました。さらにこの細胞核を除いた花粉管(オス)が、核を持つ正常な花粉管と同様に、雌しべの奥にある生殖器官の “胚珠*1(メス)”へ正確に辿り着く能力を保持していることを明らかにしました。

細胞核は高校生物の教科書の冒頭で紹介される、遺伝子の発現をつかさどる存在です。花粉管でも常に先端にある核が、花粉管の長距離に渡る伸長や正確な伸長方向制御に必要であると考えられてきました。こうした常識を覆し、細胞核からの新規の遺伝子発現を必要とせず胚珠へと方向転換して、胚珠内の卵細胞へ辿り着く能力を保持していることが示されました。

研究成果は、2021年4月22日10時(英国夏時間)、英国Natureグループが発行するオンライン科学誌「Nature Communications」に掲載されました。

 

【ポイント】

・世界で初めて細胞質中に核を持たない花粉管の作出に成功した

・細胞核が除去された花粉管(オス)は植物の胚珠(メス)の位置を認識して辿り着いた

・細胞核からの新規の遺伝子発現なしで正常に細胞が伸長するという、これまでの常識を超えた能力を花粉管は保持していた

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

*1 胚珠:

花粉管を受け入れた後に種子になるメス側の組織。卵細胞や中央細胞といった配偶子を含む複数の細胞からなっている。

 

【論文情報】

タイトル:“Persistent directional growth capability in Arabidopsis thaliana pollen tubes after nuclear elimination from the apex”

(シロイヌナズナ花粉管は無核の状態でも正常に伸長して胚珠へ到達する能力を保持している)

著者:元村 一基、武内 秀憲、野田口 理孝、土 春菜、竹田 篤史、木下 哲、東山 哲也、丸山 大輔

掲載雑誌:Nature Communications

DOI:https://doi.org/10.1038/s41467-021-22661-8

URL : https://www.nature.com/articles/s41467-021-22661-8

 

【研究代表者】

トランスフォーマティブ生命分子研究所 東山 哲也 教授

http://www.higashiyama-lab.com