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数物系科学

2021.04.23

X 線偏光観測衛星 IXPE で紐解くダイナミックな宇宙 ~ミッションを支える観測装置、今衛星に組み込まれ、打ち上げの時を待つ~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院理学研究科の三石 郁之講師、理化学研究所開拓研究本部玉川高エネルギー宇宙物理研究室 玉川 徹主任研究員らの研究グループは、2021 年度打ち上げ予定の世界初高感度 X 線偏光観測衛星 IXPE注1) に搭載される受動型熱制御薄膜フィルターおよびガス電子増幅フォイルの製作を完了し、各々米国アメリカ航空宇宙局 (NASA) やイタリアチームに提供しました。

これらの装置は観測機器の主要部である望遠鏡と検出器に取り付けられ、過酷な打ち上げ・軌道上環境に耐えながら、ミッションの科学成果創出に貢献することが期待されています。

現在は打ち上げ前最後の衛星全体の総合試験が開始されており、いよいよ打ち上げに向けた最終試験と調整が進められています。なお、本成果により、名古屋大学 - NASA 間契約の履行に伴う「提供された部品の信頼性を承認する」公文書を NASA から受け取りました。

IXPE衛星は、これまで技術的に困難とされてきた X 線偏光をかつてない感度で検出することで、ブラックホール近傍の時空構造や中性子星の超強磁場内の真空の性質を調べ、ダイナミックな宇宙を探る切り札として期待されています。

この研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業 (19H05609, 19H00696) や稲盛財団研究助成、小笠原科学技術振興財団一般研究助成事業、ウシオ電機株式会社寄付金の支援のもとで行われたものです。
 

【ポイント】

◆X 線偏光観測衛星 IXPE は、2021 年度に打ち上げが予定されている国際協力ミッションであり、現在は望遠鏡や検出器ごとの単体試験を終え、衛星に取り付けられての組み合わせ試験が進められている。

◆名古屋大学からは、理学研究科が過酷な軌道上熱環境から望遠鏡を守る受動型熱制御薄膜フィルターの開発を担当、納品までを完了し、残るは打ち上げ後の軌道上性能評価のみとなった。本成果に対し、名古屋大学 - NASA 間契約の履行に伴い NASA からの「提供された部品の信頼性を承認する」公文書を受け取った。

◆IXPE衛星は、ブラックホール・超新星残骸・強磁場中性子星などの高エネルギー天体から発せられる X 線の偏光をかつてない感度で検出し、超強重力場近傍の時空構造、衝撃波面での磁場の乱雑さ、超強磁場下でのプラズマや真空の振る舞いなど、ダイナミックな宇宙を探る切り札として期待されている。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1) IXPE: Imaging X-ray Polarimetry Explorer の略。

軟 X 線帯域での世界最高感度 X 線偏光イメージング観測を世界に先駆け実施する国際協力ミッション。観測対象はブラックホールや強磁場中性子星などの点源のみならず、超新星残骸や天の川銀河中心領域等の広がった天体をも含み、偏光という全く新しい物理量を用いて新たな宇宙科学を切り拓くことが期待されている。

 

【研究代表者】

 大学院理学研究科  三石 郁之 講師

http://www.u.phys.nagoya-u.ac.jp/uxgj.html