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医歯薬学

2021.04.14

卵巣摘出マウスを用いた閉経後骨粗鬆症に対する、低エネルギーのショートレンジ紫外線 LED 照射

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学医学部附属病院のリハビリテーション科 西田 佳弘(にしだ よしひろ)病院教授、整形外科 落合 聡史(おちあい さとし)医員らの研究グループは、発光ダイオード(LED)を用いたショートレンジ※1の紫外線(UV)を低エネルギーで副作用少なく照射することで閉経後骨粗鬆症モデルである卵巣摘出マウスにおいて血清ビタミン D レベルを増加させ、骨強度を改善させたことを明らかにしました。閉経後骨粗鬆症では加齢性骨粗鬆症とは異なったメカニズムで骨折のリスクが高くなり、その結果生活の質を著しく低下させうる病態です。ビタミン D は骨の代謝に必要不可欠であり、閉経後骨粗鬆症および加齢性骨粗鬆症のいずれに対してもビタミン D を充足させることが重要です。しかしながら、高齢者のみならず多くの閉経後女性においても十分なビタミン D を摂取できていないことが問題となっています。以前当研究グループでは、低エネルギーの UV-LED の照射が加齢性骨粗鬆症モデルである老化マウスにおいてビタミン D の効果的な供給方法になることを明らかにしました。今回は閉経後骨粗鬆症に対して低エネルギーの UV-LED 照射が有効な治療につながるかを調査しました。以前当研究グループで、生体への有害作用が少なくビタミン D の供給に有効な UV-LED の最小エネルギーの照射条件を決定しました。今回はその照射条件で、卵巣摘出マウスに対して UV-LED を照射しました。その結果、ビタミン D 欠乏状態においては UV-LED を照射したマウスは照射しなかったマウスよりも血液中のビタミン D の値が増加しており、骨皮質の厚み・骨強度とも増加していることを確認しました。また、明らかな皮膚障害を認めませんでした。
この研究結果はビタミン D を安全かつ効率的に供給し、骨粗鬆症を予防・治療するための新しい治療機器の開発につながる成果です。
本研究成果は、国際科学誌「Scientific Reports」(英国時間 2021 年 4 月 12 日付の電子版)に掲載されました。


【ポイント】

○ UV-LED 照射はビタミン D 欠乏・卵巣摘出マウスモデルにおいてビタミン D の供給効果を認め、骨皮質厚・骨強度の増加を認めた。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら


【用語説明】

※1 ショートレンジ:紫外線の波長が狭い範囲に限定されていることを表します。LED による UVの特徴で、目的の紫外線以外の波長をほとんど発光しません。

 

【論文情報】

掲雑誌名:Scientific Reports
論文タイトル: Short-range UV-LED irradiation in postmenopausal osteoporosis using ovariectomized mice
著者:Satoshi Ochiai1), MD, Yoshihiro Nishida*1)2), MD, PhD, Yoshitoshi Higuchi1), MD, PhD, Daigo Morita1), MD, PhD, Kazuya Makida1), MD, PhD, Taisuke Seki1), MD, PhD, Kunihiro Ikuta1)3), MD, PhD, Shiro Imagama1), MD, PhD
所属:1) Department of Orthopaedic Surgery, Nagoya University Graduate School of Medicine
2) Department of Rehabilitation Medicine, Nagoya University Hospital
3) Medical Genome Center, Nagoya University Hospital
DOI:https://doi.org/10.1038/s41598-021-86730-0
English ver.
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_E/research/pdf/Sci_Rep_210412en.pdf

 

【研究代表者】

医学部附属病院 落合 聡史 医員

http://meidai-seikei.jp/