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医歯薬学

2021.04.21

Linked Color Imaging を使用した画像強調内視鏡で腺腫の見逃し率減少を実証

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学医学部医学系研究科消化器内科学の藤城 光弘(ふじしろ みつひろ)教授、山村 健史(やまむら たけし)助教(共筆頭著者)、長谷川 一成(はせがわ いっせい)医員(筆頭著者)らの研究グループは、通常の内視鏡観察で使用される WLI(White Light Imaging)と比較して画像強調内視鏡※1の一種である LCI(Linked Color Imaging)を使用することで、内視鏡観察時に生じるポリープ(腺腫)の見逃しが減少することを明らかにしました。大腸癌は主に良性腫瘍である腺腫が経年変化することで発症するものと考えられており、内視鏡観察時に発見した際には早期の切除が望まれます。したがって、内視鏡医には病変を見逃しなく発見し適切に治療することが求められていますが、残念ながら内視鏡の熟練医ですら10~30%程の病変は見逃しているといった報告も認めます。一般的に腺腫は周囲の正常な粘膜と比べて赤色であることが多いですが、赤色の弱い病変や小さな病変、平坦な病変は見逃されやすいとされています。藤城教授らの研究グループは、赤色を増強する画像強調内視鏡である LCI を使用することで、病変の視認性が改善され、小さな病変や平坦な病変において特に見逃しを減らすことができるということを発見しました。また、LCI は腺腫発見率の低い内視鏡医に特に有用であることがわかりました。これらの結果から、病変が切除された後に推奨される次回の大腸内視鏡検査時期をより適切に判断することが可能となり、検査間に発症する大腸癌の発生率を下げる可能性が示されました。
本研究成果は 2021 年 4 月 8 日の米国科学雑誌「Clinical Gastroenterology and Hepatology」(電子版)に掲載されました。



【ポイント】

○ LCI を使用することで大腸癌の主な原因とされるポリープ(腺腫)の見逃しを減らすことができるとわかりました。
○ 中でも見逃されやすいといわれる小さな病変や平坦な病変の視認性が改善することがわかりました。
○ LCI は腺腫発見率の低い内視鏡医に特に有用であることがわかりました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら


【用語説明】

※1 画像強調内視鏡:通常の白色光で得られた情報にコンピュータ処理を施すことで表面構造や血管構造をより強調した方法。


【論文情報】

掲雑誌名:Clinical Gastroenterology and Hepatology
論文タイトル:Detection of colorectal neoplasms using linked color imaging: A prospective, randomized, tandem colonoscopy trial
著者:Issei Hasegawa, Takeshi Yamamura, Hiroto Suzuki, Keiko Maeda2, Tsunaki Sawada2, Yasuyuki Mizutani , Eri Ishikawa , Takuya Ishikawa , Naomi Kakushima , Kazuhiro Furukawa, Eizaburo Ohno, Hiroki Kawashima2, Masanao Nakamura, Mitsuhiro Fujishiro
所属:1 Department of Gastroenterology and Hepatology Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan
2 Department of Endoscopy Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan
DOI:http://doi.org/10.1016/j.cgh.2021.04.004
English ver.
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_E/research/pdf/Cli_Gas_Hep_210421en.pdf

 

研究代表者

医学部附属病院 長谷川 一成 医員

https://www.med.nagoya-u.ac.jp/gastroenterology/