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医歯薬学

2021.06.16

名古屋発;飛沫を防ぐ内視鏡検査マスク:「e-mask」の開発に成功[内視鏡検査時の簡便・安価・実用的な飛沫感染予防マスク]

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院医学系研究科呼吸器内科学の博士課程 4 年の安井 裕智大学院生(共同筆頭著者 1)(現豊橋市民病院呼吸器内科)、同大医学部附属病院呼吸器内科の岡地 祥太郎病院助教(共同筆頭著者 2)、同大医学部 6 年の深津 紀暁(共同筆頭著者 3)、同大高等研究院・ JST 創発的研究支援事業採択研究者・JST 科学技術人材育成のコンソーシアムの構築事業次世代研究者育成プログラム対象助教・文部科学省研究大学強化促進事業;最先端イメージング分析センター/医工連携ユニット 907 プロジェクト (B3 ユニット:若手新分野創成研究ユニット)・同大医学部医学系研究科呼吸器内科学の佐藤 和秀 S-YLC 特任助教(共同筆頭著者 4・責任著者)らの研究グループは、気管支鏡※1などの内視鏡検査の際に患者さんが装着することにより検査時の飛沫拡散を防止するマスクの共同開発を名古屋のマスクメーカーとの産学連携事業として成功しました。マスクはサージカルマスクの折り目を工夫し、内視鏡と吸引用チューブを通す切れ込みが設けられています。また、本マスクはマスクメーカーと共同で特許出願しており、株式会社スズケンより「Kenz e-mask」として販売予定です(2021 年 11 月発売予定 本商品窓口;株式会社スズケン ケンツ事業部)。本マスクでの飛沫予防効果を検証するために、微粒子高感度可視化実験による評価を新日本空調株式会社の実験協力を得て実施し、仰臥位(仰向け)、側臥位(横向き)、座位のいずれでもマスクがあることによって明らかに飛沫の拡散が減っていることが確認できました。
このマスクは気管支鏡だけでなく、上部消化管内視鏡や咽喉頭内視鏡、鼻咽頭ぬぐい液採取等においても活用できる可能性もあり、検査・処置に伴う飛沫感染の予防に広く役立つことが期待できます。日常生活でよく使われる不織布のサージカルマスクをもとに設計しており、使い捨て、低コストで簡便です。これにより内視鏡検査室等での感染リスクの減少につながると考えています。本マスクにより検査に従事する医療従事者はもちろん、検査を受ける患者様への感染リスク低減にもつながると期待されます。
本研究は、Yahoo!基金、文部科学省研究大学強化促進事業 B3 ユニット名古屋大学総長経費、令和 2 年度国立大学イノベーション創出環境強化事業等のサポートを受けて実施され、米国胸部学会 American Thoracic Society(ATS)の学会誌である「American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine」(2021 年 6 月 15 日(米国東部時間))オンライン版に掲載されました。


【ポイント】

○内視鏡検査時の飛沫拡散を防止するマスクを開発。
○飛沫可視化実験によりマスクによる飛沫防止効果を確認。
○サージカルマスクをもとに設計しており、低コストで装着が簡便。
○内視鏡検査時の感染リスクを低減。
○名古屋大学、名古屋のマスクメーカー、名古屋の企業の連携による COVID-19 禍での医療貢献。
○With/ post コロナでの新しい安全な内視鏡検査スタイルの提案。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら


【用語説明】

※1 気管支鏡:直径 3~6mm 程度の細くて柔らかい管で,胸の奥深くにある肺につながる気管・気管支の中をのぞき見る器械です。胃カメラと同じ構造ですが,胃カメラと比べると大変細くできています。気管・気管支や肺など呼吸器の病気にかかった患者さんにとって重要な器械で,気管・気管支内を観察すると共に、組織や細胞を採取して正確な診断をつけたり(気管支鏡検査)、気管・気管支が狭くなる病気などを治療したりする(気管支鏡下治療)場合に用いられます。

【論文情報】

掲雑誌名:American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine
論文タイトル:Development of a mask for bronchoscopy to prevent infection under COVID-19 pandemic; image evaluation
著者:Hirotoshi Yasui1*, Shotaro Okachi1*, Noriaki Fukatsu2*, and Kazuhide Sato1,2,3,4* *All authors are equally contributed to this work
所属:1 Respiratory Medicine, Nagoya University Graduate School of Medicine
2 Nagoya University Institute for Advanced Research, Advanced Analytical and Diagnostic Imaging Center (AADIC) / Medical Engineering Unit (MEU), B3 Unit
3 FOREST-Souhatsu, CREST, JST
4 Nagoya University Institute for Advanced Research, S-YLC
DOI:https://doi.org/10.1164/rccm.202010-4037IM
English ver.
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_E/research/pdf/Ame_Jou_Res_Cri_210615en.pdf