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生物学

2021.07.14

メスがいないとオスメダカの精巣形態と精子形成状態が変化する

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院理学研究科の住田 流香 大学院生と田中 実 教授らの研究グループは、メダカ注1)のオスは、メスと交配をしているか否かに応じて、精子を作り出す状態を変化させ、同時に精巣そのものの形態も変化していることを明らかにしました。

メダカは繁殖期には毎日交配をして受精卵をつくります。さらにオスは一日に複数のメスと交配できるほど多量の精子をつくっています。しかし、もし長い間交配ができない状態が続いたら、精子をつくる状態はどうなるのでしょうか?本研究では、メダカは、精子形成開始から精子に分化するまでは、約14日かかることを明らかにしました。そして毎日交配をしているオスと、長期間交配をしていないオスの精巣を比較し、精巣の構造、また精子を作り出す過程において、両者の間で違いがあることを明らかにしました。その結果、交配の有無は、精巣注2)の状態と密接に繋がっていることが示されました。生殖能力が、交配環境によって変化することを示すひとつの例となりました。

本研究成果は、2021年7月13日(日本時間7月14日午前1時)付日本動物学会誌「Zoological Science」に掲載されました。

この研究は文部科学省 科学研究費助成事業 新学術領域研究「性スペクトラム」(17H06430)、基盤研究A(16H02514)、の支援のもとで行われたものです。
 

【ポイント】

・毎日交尾をするオスとしていないオスでは、精巣の構造と精子をつくる状態に違いがみられる。

・個体環境によって精巣の状態が変化する。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)メダカ:

小学校理科教科書にも述べられている日本人に馴染み深い魚。生物学や基礎医学研究において日本が誇る実験動物であり、「medaka」は 英語としても通用し、生物学各分野最先端研究で用いられている。

注2)生殖腺:

オスの生殖腺を精巣、メスの生殖腺を卵巣と呼ぶ。

 

【論文情報】

雑誌名:Zoological Science

論文タイトル:Dynamics of spermatogenesis and change in testicular morphology under ‘mating’ and ‘non-mating’ conditions in medaka (Oryzias latipes)

著者:住田 流香、西村 俊哉、田中 実        

DOI: 10.2108/zs210025
URL: https://doi.org/10.2108/zs210025

 

【研究代表者】

http://www.medaka.bio.nagoya-u.ac.jp/