国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院工学研究科の植田 研二 准教授らの研究グループは、グラフェン/ダイヤモンド積層界面が、重要な光情報のみを選択的に記憶し、不要な情報を忘却する脳型(脳の様に動く)光記憶素子となることを新たに見出しました。
人間の脳では、神経細胞のつなぎ目であるシナプス注1)が、外部刺激により結合強度変化することで情報の記憶・忘却が切り替わります。本研究で開発したグラフェン/ダイヤモンド素子は、シナプスと同様に、光刺激の強弱に応じて、記憶保持時間が切り替わる特性を有しており、1つの素子で人間の眼と脳の機能を併せ持つ事が明らかとなりました。シナプスでは電気的な刺激で結合強度変化が起こりますが、本素子では光刺激により結合強度変化が起こるため、画像等の光情報が直接検出され、重要度(光刺激の頻度)に応じて自律的に記憶・忘却されることが大きな特徴となります。
本成果により、光刺激の頻度、即ち情報の重要度に応じて画像等の光情報が選択的に記憶・忘却される脳型イメージセンサ注2)などの開発ができ、将来的に重要情報を自律的に選択し、記憶する新型カメラの開発に繋がることが期待されます。
本研究成果は、2021年6月22日付オランダElsevier社の科学雑誌『Carbon』にオンライン掲載されました。
・グラフェン/ダイヤモンド接合界面が、重要な光情報のみを記憶し、不要な情報を忘却する脳型光記憶素子となることを新たに見出した。
・グラフェン/ダイヤモンド6素子を画素として用い、配列した構造で、実際に画像(文字パターン)が検出でき、光刺激の頻度に応じて選択的に記憶・忘却されることが分かった。
・光刺激の強弱、即ち情報の重要度に応じて画像等の光情報が選択的に記憶・忘却されるイメージセンサや新型光コンピュータなどの開発が期待される。
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注1)シナプス:
脳の神経細胞(ニューロン)同士のつなぎ目の部分であり、外部刺激に応じて信号の伝達効率である結合強度が変化し、情報の記憶・忘却が切り替わる。
注2)イメージセンサ:
デジタルカメラなどの心臓部となる部品であり、レンズなどから入射された光を電気信号に変換する半導体素子。人間の眼の網膜に相当する機能を有している。
雑誌名:Carbon
論文タイトル:Optoelectronic synapses using vertically aligned graphene/diamond heterojunctions
著者: Y.Mizuno, Y.Ito, K.Ueda
(Y.Mizuno, Y.Itoは研究室の学生)
DOI:10.1016/j.carbon.2021.06.060
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0008622321006473