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医歯薬学

2021.07.02

侵害性および非侵害性瞬目反射を用いた内因性疼痛抑制能測定法を確立

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学医学部附属病院麻酔科の絹川友章病院助教と同大大学院医学系研究科麻酔・蘇生医学の西脇公俊教授は、愛知県医療療育総合センター発達障害研究所(乾幸二部長)、生理学研究所(柿木隆介名誉教授)との共同研究で、ヒトが本来持っている痛みを抑制する能力を従来の手法に比べて客観的かつ簡便に測定する方法を確立しました。本研究成果は 2021 年 6 月 17 日付国際科学誌
「Neuroscience」(電子版)に掲載されました。ヒトにはもともと疼痛を抑制する能力が備わっており、これを実験的に評価したものの一つをCPM (Conditioned Pain Modulation)*1といいます。近年、CPM と手術後の痛みや慢性痛との関係が注目されており、欧米では CPM を手術前に測定することにより、術後鎮痛管理に役立てる試みがなされています。しかしながら、従来の測定法では、特殊な機械を必要とし、また痛みだけを抑制する能力を反映するのかが定かではありませんでした。さらに、測定には複数の回数と日程を必要とし、被験者と測定者の負担が大きいという問題もありました。それらの理由により、CPM 測定の臨床応用は進んでいませんでした。
本研究では、生理学研究所が開発した痛覚だけを選択的に刺激する装置と、多くの病院にて利用されている筋電図装置を使用して、1 回20分程度で CPM を測定する方法を確立しました。従来の手法に比べて、簡便かつ客観的であり、また、短時間で済むことから、疼痛メカニズム解明の基礎研究のみならず、手術後の疼痛予測や慢性痛患者の評価にこの方法が応用されることが期待できます。
本研究は日本学術振興会の科学研究費助成事業(若手研究)の支援を受けたものです。


【ポイント】

○ヒトが本来持っている、痛みを抑制する能力を客観的に測定する簡便な方法を確立した。
○この能力は、脳幹において痛覚を選択的に抑制することが明らかとなった。
○客観的かつ簡便に測定できる手法であるため、個人レベルで疼痛抑制能力を評価できる。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら


【用語説明】

※1 CPM (Conditioned Pain Modulation)
ヒトに本来備わっている痛みを抑制する能力の一つ。

 

【論文情報】

掲雑誌名:Neuroscience
論文タイトル:Conditioned pain modulation: comparison of the effects on nociceptive and nonnociceptive blink reflex
著者・所属:
絹川友章 (名古屋大学医学部附属病院麻酔科)
乾幸二 (愛知県医療療育総合センター 発達障害研究所)
谷口智哉(名古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医学講座)
竹内伸行(愛知医科大学精神科)
杉山俊介(岐阜大学精神科)
西原真理(愛知医科大学学際的痛みセンター)
西脇公俊(名古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医学講座)
柿木隆介(自然科学研究機構 生理学研究所)
DOI:https://doi.org/10.1016/j.neuroscience.2021.06.019
English ver.
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_E/research/pdf/Neuro_210617en.pdf

 

【研究代表者】

医学部附属病院 絹川 友章 病院助教

https://www.med.nagoya-u.ac.jp/anesthesiology/