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工学

2021.07.27

世界初!室温で右巻き・左巻き円偏光発光を自在に切替 ~ 次世代量子通信の光源技術としての応用に期待~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院工学研究科の蒲 江(ホ コウ) 助教、竹延 大志 教授らの研究グループは、京都大学エネルギー理工学研究所の松田 一成 教授、宮内 雄平 教授、東京都立大学の宮田 耕充 准教授らの研究グループとの共同研究で、原子スケールの厚みを持つ半導体に歪みを与えることで、世界で初めて、室温において右巻き・左巻き円偏光注1)発光を電気的に生成及び切替可能な発光デバイスの実現に成功しました。

円偏光は光の情報(右巻き・左巻き)と電子の量子情報(上スピン・下スピン)を相互変換可能であり、将来の光量子通信や量子コンピュータ注2)の担い手として期待されています。そのためには、電気的に円偏光を生成及び切替できる光源が必要不可欠ですが、従来実現されている円偏光発光デバイスの多くは片方の円偏光しか制御できません。

本研究成果により、次世代量子情報通信・コンピューティングの光源技術としての応用が期待されます。

本研究成果は、2021年7月24日付ドイツの科学雑誌 「Advanced Materials」オンライン版に掲載されました。

本研究は、日本学術振興会 科学研究費事業 『JP15H05412, 15K13337, 15H05408 16H00918, 16H00911, 16H06331, 17K19055, 18H01832, 19K22142, 20H02605, 20H05664, 19K15383, 19K22127, 20H05189, 20H05664, 20H05862, 20H05867』、国立研究開発法人 科学技術振興機構CREST 『JPMJCR17I5, JPMJCR16F3』、近藤記念財団 研究助成、旭硝子財団 研究助成の支援のもとで行われたものです。

 
【ポイント】

・特殊な光電子物性を有する原子層半導体において、歪みを与えることで、室温で円偏光発光を生成可能な発光デバイスの作製に成功。

・デバイスの歪み方向や電場(電流)方向を変えることで、右巻き円偏光と左巻き円偏光を制御するメカニズムを提唱し、初めて室温において円偏光発光の二色比の電気的な切替に成功。

・円偏光とスピンの変換を利用した量子情報通信の光源技術としての応用に期待。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)円偏光:

光は、電場成分と磁場成分が進行方向に対して垂直に振動しながら伝搬している。このとき、電場と磁場が時間的・空間的に規則を持って振動しており、この規則性に由来した偏光という自由度を有している。特に、電場または磁場が周期的に(らせん)回転しながら進行する場合は、円偏光と呼び、回転の方向に応じて右巻き・左巻きの円偏光と区別される。

注2)量子コンピュータ:

量子力学特有の物理状態である、重ね合わせ状態を利用して情報処理・演算するコンピュータを量子コンピュータという。従来のコンピュータに比べ、遥かに速く多くの情報を安全に計算できる。この重ね合わせ状態による量子コンピュータの情報単位は、量子ビットと呼ばれる。

 

【論文情報】

雑誌名:Advanced Materials

論文タイトル:Room-temperature chiral light-emitting diode based on strained monolayer semiconductors

著者:蒲 江*(名古屋大学)、Wenjin Zhang(京都大学)、松岡 拓史(名古屋大学)、小林 佑(東京都立大学)、高口 裕平(東京都立大学)、宮田 耕充(東京都立大学)、松田 一成(京都大学)、宮内 雄平(京都大学)、竹延 大志*(名古屋大学)*責任著者

DOI:10.1002/adma.202100601

URL:https://doi.org/10.1002/adma.202100601

 

【研究代表者】

大学院工学研究科 蒲 江 助教

http://www.qtum.ap.pse.nagoya-u.ac.jp/