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農学

2021.09.27

岐阜県瑞浪市大湫町の大杉の倒木化は、根系の発達制限が原因だった

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院環境学研究科の平野 恭弘 准教授、大学院生命農学研究科の谷川 東子 准教授らの研究グループは、国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所の南光 一樹 主任研究員との共同研究で、岐阜県瑞浪市大湫町(おおくてちょう)(以下、「岐阜大湫町」)における樹齢670年の神明大杉の倒木化は、根系の発達制限や腐朽などにより、幹などの地上部と根系の地下部とのバランスが崩れたことに要因があることを明らかにしました。
令和2年7月豪雨の中、岐阜大湫町のシンボルである神明大杉が倒木化しました。この要因は、豪雨による影響が倒木時から指摘されてきました。本研究では、レーザースキャナなどを用いて倒木化した大杉の根系状況を評価することで、土壌と根系の一体化した根鉢が小さいこと、長期にわたる根の腐朽や豪雨期間の気象状況により、根系の支持力が低下し、大杉の地上部と地下部のバランスが崩れたことが、倒木化の要因であることを明らかにしました。
本研究は、社寺林の巨木や森林で大径木化した樹木について、葉や幹など地上部の衰退状況だけでなく、根系など地下部の視点からも管理の必要性があることを示しています。本研究の結果は、今後、気候変動下で予想される豪雨や強風などに対する樹木の倒木化を防ぐ管理指針の作成にも貢献が期待されます。
本研究成果は、2021年9月27日付で根研究学会誌「根の研究」に掲載されました。
本研究は、令和2年度から始まった科学研究費補助金基盤研究(B)「地中レーダを用いた樹木根系の最大深さと構造の非破壊推定手法の提案」及び「強風雨時に発生する立木倒伏の動的メカニズムの解明とモデル構築」の支援のもとで行われたものです。

 

【ポイント】

・令和2年7月に岐阜大湫町で倒木化した樹齢670年の神明大杉の根系を評価。
・レーザースキャナなどにより、大杉の根系は幹など地上部と比較して小さいことを定量化。
・倒木時の降水量や日照時間など気象状況、根の腐朽状況から根の支持力の低下を示唆。
・巨木や大径木の管理について、葉など地上部衰退だけでなく根系評価の必要性を指摘。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【論文情報】

掲載紙:根の研究 30巻 65~75頁  2021年9月27日公開
論文タイトル:2020年7月に倒木化した岐阜県大湫町神明大杉の根系状況
著者:平野恭弘(名古屋大学)・南光一樹(森林総合研究所)・土居龍成・西村澪・杁山哲矢・谷川東子(名古屋大学)

 

【研究代表者】

https://www.eps.nagoya-u.ac.jp/~geosys/t_hirano.html