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数物系科学

2021.10.26

西之島山体の内部構造を解明 ~ドローンを使った空中磁気探査を世界で初めて火山島で実施~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学環境学研究科の市原 寛 助教は、国立研究開発法人海洋研究開発機構、国立大学法人東京大学地震研究所ともに、2019年9月に西之島上空でドローンを使った空中磁気探査を実施し、西之島上空の地磁気の強さ(全磁力)の分布を解明しました。その結果、西之島周囲に顕著な磁気異常を発見しました。この磁気異常は磁化が強い2つの領域(火口を取り囲むドーナツ状の領域と島の北東に位置する帯状の領域)によって形成され、これらは1973―1974年の噴火に関連していると考えられます。
ドローンを船舶から海洋の火山島に飛ばして空中磁気探査を実施したのは、世界で初めての例です。今後、ドローンを使った全磁力測定を繰り返すことによって西之島内部の磁化構造の変化を検出することにより、将来の火山活動の予測への応用が期待されます。

 

【ポイント】

本研究では上述の問題を解決するために、全磁力計を搭載したドローンを使用して西之島上空の地磁気(*1)の強さ(全磁力)を測定しました。観測は2019年6月に気象庁「啓風丸」の航海で行い、船の甲板からドローンを離着陸させました。この測定によって、西之島の上空で全磁力の分布を面的に得ることができました。得られた全磁力から周囲の平均的な地磁気の影響を取り除くことで内部の磁化(*2)構造の不均質による磁気異常(*3)だけを抽出し、西之島火山内部の磁化強度の分布を推定しました。その結果、火口を取り囲むドーナツ状の領域と島の北東に位置する帯状の領域に周囲よりも磁化の強い場所があることを発見しました。これらは、1973-1974年の噴火の際にマグマが通った跡と関連していると考えています。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

*1地磁気:地球がもつ固有の磁場のことで、地磁気の9割以上は地球の外核によって生じています。この磁場は、地球の中心にN極を南にS極を北に向けて置いた棒磁石で表すことができます。残りの1割未満は、地表よりも高い電離層や磁気圏を流れる電流と地殻の岩石の磁化に起因しています。私たちが注目しているのは、残りの1割未満の地殻の岩石の磁化に起因した地磁気です。地磁気には大きさと方向があり、西之島付近では約42,000nTくらいの大きさで、地理的北(地軸の指す方向)から西に約4度、水平から下向きに約37度の方角を示します。

 

*2磁化:岩石が磁場中で高温から冷却すると磁石のように振る舞うことがあります。磁化の大きさは、岩石中の鉱物の種類や温度によって変化することが知られています。

 

*3磁気異常:地磁気の空間的分布のなかで、周囲の平均的な地磁気からの差のことです。磁気異常は地下の磁化分布の不均質によって生じます。

 

【研究代表者】

大学院環境学研究科 市原 寛 助教
https://www.seis.nagoya-u.ac.jp/~h-ichi/main.html