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工学

2021.10.27

コンクリーション化による岩盤亀裂シーリング実証試験に成功! ~地下水透水性亀裂長期閉塞技術の実用化に目処~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学博物館の吉田 英一 教授、山本 鋼志 特任教授、同大学大学院環境学研究科の丸山 一平 教授、淺原 良浩 准教授と大成建設株式会社の研究グループは、炭酸カルシウムを主成分とする球状コンクリーション注1)の形成プロセスを応用し、コンクリーション化剤を用いた地下環境での岩盤亀裂シーリング実証試験を行い、数ヶ月~1年弱でトンネル周辺岩盤中の亀裂をシーリングし、地下水の湧水抑制に成功しました。
今回、開発したコンクリーション化剤(コンクリーションシード)を用いて、幌延深地層研究センター(北海道幌延町)の地下環境で、亀裂シーリング実証試験を1年かけて行いました。実験は、地下350mのトンネル掘削によって生じたトンネル周辺岩盤中の地下水の流れが多い亀裂を、コンクリーション化剤でシーリングし、地下水の湧出を抑制する目的で行ったものです。今回開発したコンクリーション化剤を用いて、幌延深地層研究センター(北海道幌延町)の地下環境で、コンクリーション化による亀裂シーリング実証試験を1年間かけて行いました。
この結果、コンクリーション化による炭酸カルシウムの亀裂シーリングが持続的に進行し、透水性が約1年で実験開始直前の1/100〜1/1000に減少し、地下水の抑制効果が持続的に進行することを確認でき、実用化の目処が付きました。
開発した技術は、コンクリーション化を促進する元素が、岩盤中の亀裂や空隙に濃度勾配で広がり、地下水と反応して炭酸カルシウムとして沈殿・シーリングし閉塞するというものです。岩盤中の高い地下水圧に影響されることなく、元素レベルの微細な空隙までシーリングさせることが可能であり、また、シーリングする炭酸カルシウムの結晶(方解石)は、環境中に豊富に存在する「自然の素材」であり、環境変化にも強く非常に安定した鉱物です。
この手法は、放射性廃棄物の地下隔離・処分、二酸化炭素の地下貯留、石油の廃孔シーリングのほか、道路・鉄道トンネル周辺岩盤の地下水抑制などといった地下環境を活用する様々なニーズに応用可能であり、今後の幅広い技術への展開が期待されます。

 

【ポイント】

・自然の岩盤(地層)中で形成される、炭酸カルシウム(CaCO3)を主成分とする球状コンクリーションの形成メカニズムを応用した長期止水技術「コンクリーション化剤」(コンクリーションシード:民間化学メーカーとの共同開発)を開発した。
・開発した「コンクリーション化剤」に関する特許を取得し、実際の地下岩盤・トンネル(坑道)で、地下水を湧出する地下坑道(トンネル)周辺岩盤中の亀裂・空隙を対象にシーリング効果の実証試験を行い、止水効果を確認した。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)球状コンクリーション:
炭酸カルシウムや鉄酸化物などを主成分とする地層中(堆積岩のみ)で見出すことのできる球状の岩塊。

 

【論文情報:コンクリーション化プロセスに関する代表論文】

雑誌名:Scientific Reports (2018)
論文名:Generalized conditions of spherical carbonate concretions formation around decaying organic matter in early diagenesis.
著者:H.Yoshida, K.Yamamoto, M.Minami, N.Katsuta, S.Sirono, & R.Metcalfe
DOI:10.1038/s41598-018-24205-5
URL: https://www.nature.com/articles/s41598-018-24205-5

 

【研究代表者】

名古屋大学博物館 吉田 英一 教授
http://www.num.nagoya-u.ac.jp/dora_yoshida/profile.html