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生物学

2022.01.26

ペチュニアが異科接木できることを発見 ~異科接木法iPAGは植物科学研究の強力なツール~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学生物機能開発利用研究センターの黒谷 賢一 特任講師と野田口 理孝 准教授らの研究グループは、ナス科植物であるペチュニアが、異なる科の植物に対して接木を成立させること(異科接木)ができることを発見しました。
植物の接木は古くから行われてきた農業技術であり、果物や野菜の栽培に広く利用されています。同研究グループでは、タバコ属植物、寄生植物がこれまで不可能と考えられていた異科接木を成立させることを発見していましたが、今回、第三の植物として世界の花卉(かき)園芸種であるペチュニアにも、異科接木の能力があることを示しました。
本研究では、タバコ属植物とペチュニアが異科接木を成立させることができる共通の因子として、β-1,4-グルカナーゼ(セルラーゼ)の遺伝子発現と、その酵素活性が重要であることも合わせて分かりました。そこで、この共通のメカニズムに基づく植物の接木を “ interfamily Partner Accepting Graft(iPAG)”と名付けることにしました。今後iPAGは接木の新たな技術としてだけでなく、植物の基礎研究分野における主要な研究課題とされる「病害応答、植物免疫、環境ストレスへの適応メカニズム、全身性シグナル伝達機構など」において、研究ツールとしての利用が期待されます。
本研究成果は、2022年1月20日付で国際学術誌「Horticulture Research」電子版に掲載されました。
本研究は、科学研究費助成事業(18H03950, 20H03273, 21H00368, 21H05657)、イノベーション創出強化研究推進事業(BRAIN 28001A, 28001AB)の支援のもとで行われたものです。

 

【ポイント】

・ナス科タバコ属で発見された遠縁の植物との接木能力が、タバコ属植物の他に、世界中で花卉園芸種として親しまれるペチュニアにも認められることを発見。
・タバコ属植物、ペチュニア、アサガオの、異科接木の大規模な遺伝子発現プロファイル比較解析を実施。
・β-1,4-グルカナーゼ(セルラーゼ)がタバコ属植物同様にペチュニアの異科接木時にも発現上昇して機能することを解明。
・共通の原理に基づくことが示された、タバコ属植物、寄生植物、ペチュニアの異科接木法を “interfamily Partner Accepting Graft(iPAG)”と命名。
・病害応答、植物免疫、環境ストレスへの適応メカニズム、全身性シグナル伝達機構など、今後の植物科学研究における研究ツールとしての利用が期待される。


◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【論文情報】

雑誌名:Horticulture Research
論文タイトル:Discovery of the interfamily grafting capacity of Petunia, a floricultural species(花卉園芸種ペチュニアにおける異科接木能力の発見)
著者:Ken-ichi Kurotani, Chaokun Huang, Koji Okayasu, Takamasa Suzuki, Yasunori Ichihashi, Ken Shirasu, Tetsuya Higashiyama, Masaki Niwa, Michitaka Notaguchi
(黒谷 賢一、Chaokun Huang、岡安 浩二、鈴木 孝征、市橋 泰範、白須 賢、東山 哲也、丹羽 優喜、野田口 理孝)
DOI: 10.1093/hr/uhab056
URL:https://doi.org/10.1093/hr/uhab056

 

【研究代表者】

http://bbc.agr.nagoya-u.ac.jp/~graft/