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複合領域

2022.01.31

ナノ結晶を電子の通り道とする酸化シリコン保護膜を実現 ~次世代シリコン系太陽電池の開発に期待~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院工学研究科の後藤 和泰 助教、宇佐美 徳隆 教授は、国立大学法人東京大学生産技術研究所の福谷 克之 教授らとの共同研究で、シリコンナノ結晶により導電性を向上させた酸化シリコン保護膜を新たに開発しました。
本研究成果は、シリコン系太陽電池の長期信頼性向上や、異種材料を積層した高性能な次世代シリコン系太陽電池の開発などの貢献に期待できます。
太陽電池では、太陽光で生じた電子と正孔(ホール)を効率的に収集することが重要となります。厚いシリコン酸化膜は、結晶シリコン表面の良好な保護膜として働くことが知られていますが、電気抵抗が高いため、結晶シリコン内で生成した電子や正孔を収集することが困難でした。そこで本研究では、電気抵抗が高く厚い酸化膜の中に、数ナノメートルのシリコンナノ結晶を複合化させ、シリコンナノ結晶を電子の通り道として利用する新たな保護膜を開発しました。また、8ナノメートル程度の比較的厚いシリコン酸化膜において、高い導電性(低い電気抵抗)と、結晶シリコン表面に対する良好な保護性能を両立させることができました。
本研究成果は、2022年1月28日18時(日本時間)付アメリカ化学会雑誌「ACS Applied Nano Materials」に掲載されました。
本研究は、日本学術振興会「研究活動スタート支援」「若手研究」「ハイドロジェノミクス」、新エネルギー・産業技術総合開発機構の支援のもとで行われたものです。

 

【ポイント】

・シリコンナノ結晶をシリコン酸化膜に複合化した保護膜を開発。
・シリコンナノ結晶が電子の通り道として動作。
・高い導電性と結晶シリコン表面に対する良好な保護性能を両立。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【論文情報】

雑誌名:ACS Applied Nano Materials
論文タイトル:Silicon Nanocrystals Embedded in Nanolayered Silicon Oxide for Crystalline Silicon Solar Cells
著者:R. Tsubata, K. Gotoh, M. Matsumi, M. Wilde, T. Inoue, Y. Kurokawa, K. Fukutani, and N. Usami        
DOI: 10.1021/acsanm.1c03355
URL: https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acsanm.1c03355               

 

【研究代表者】

大学院工学研究科 後藤 和泰 助教
https://www.material.nagoya-u.ac.jp/photonics/index.html