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化学

2022.03.30

「分子の落とし穴」を作り、電極基板の上にサッカーボール分子C60を整列させた!!

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院理学研究科の田中 健太郎 教授、河野 慎一郎 講師らの研究グループは、同大学大学院工学研究科の尾上 順 教授、中谷 真人 准教授、同大学トランスフォーマティブ生命分子研究所の柳井 毅 教授、齋藤 雅明 助教との共同研究により、サッカーボール分子C60注1)を電極基板の上に思い通りに整列させることに成功しました。
化学反応などによりC60分子一つ一つに情報を持たせることができれば、C60分子を素子とした全く新しい単分子メモリーや分子デバイスを創り出すことができます。
本研究では、大環状分子という、新たに合成した有機分子でできた「分子の落とし穴」を電極基板上に規則正しく並べ、C60分子が1つずつはまり込むようにしたことで、C60分子をナノメートルスケールで精密に整列させることに成功し、C60分子を用いた分子デバイスなどの開発における課題を解決しました。本研究成果は、単分子メモリーや分子デバイス、太陽電池、センサー、ナノ触媒などの多様な応用研究に繋がるものと期待されます。
本研究成果は、2022年3月22日付アメリカ化学会「Journal of the American Chemical Society」オンライン版に掲載されました。
本研究は、文部科学省科研費 基盤研究A「液晶性ナノ空間を用いた新反応場の創出」、新学術領域研究(研究領域提案型)公募研究「大環状化合物の特異的ナノ空間を利用する物質輸送と分離膜構築に関する研究」等の支援のもとで行われたものです。
 

【ポイント】

・C60分子を単分子メモリーや分子デバイスとして用いるために必要な課題を解決した。
・電極基板の上に、大環状分子有機分子薄膜で「分子の落とし穴」を並べた。
・それぞれの「分子の落とし穴」にC60分子をはめ込むことができた。それにより、電極基板の上にC60分子を整列させることがきた。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)C60
炭素のみで構成された球状骨格の構造をもつ多面体分子であるフラーレンの一種。分子構造の面白さだけでなく、超伝導性や優れた電子受容性などに優れた特性を持ち、幅広い材料分野への応用が期待されている。

 

【論文情報】

雑誌名:Journal of the American Chemical Society
論文タイトル:Thermally-Stable Array of Discrete C60s on Two-Dimensional Crystalline Adlayer of Macrocycles both in Vacuo and under Ambient Pressure
(真空下と大気下の両方の条件において、大環状化合物の二次元結晶性膜の上に形成した、熱的安定な孤立したC60の配列化)
著者:Shin-ichiro Kawano (名大講師), Masato Nakaya (名大准教授), Masaaki Saitow (名大助教), Atsuki Ishiguro (名大元院生), Takeshi Yanai (名大教授), Jun Onoe (名大教授), and Kentaro Tanaka (名大教授)
DOI: 10.1021/jacs.1c13610
URL: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/jacs.1c13610

 

【研究代表者】

大学院理学研究科 田中 健太郎 教授
http://supra.chem.nagoya-u.ac.jp/