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数物系科学

2022.04.07

135億光年かなたの最遠方銀河の候補を発見

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院理学研究科の田村 陽一 准教授は、東京大学宇宙線研究所の播金優一助教、早稲田大学理工学術院先進理工学部の井上昭雄教授を中心とする国際研究チームと共に、135億光年かなたの宇宙に存在する明るい銀河の候補、HD1を発見しました。この発見はHD1のような明るい天体が、ビッグバン後わずか3億年の宇宙に既に存在していたことを示唆しています。この銀河候補は昨年末に打ち上げられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の第1期観測のターゲットになっており、分光観測により正確な距離が確認されれば、これまでの記録を塗り替える最遠方の銀河になります (注)。
本成果を記した論文は、4月8日に米国の天文学誌『アストロフィジカル・ジャーナル』(The Astrophysical Journal) の電子版に掲載される予定です。

 

【ポイント】

◆135億光年かなたの宇宙に明るく輝く銀河の候補を発見しました。現在見つかっている銀河の中で最遠方の候補です。
◆発見された銀河は非常に明るく、これまでの銀河形成モデルでは予想されていなかったような天体です。
◆銀河候補はジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の第1期観測ターゲットになっており、今後の観測でこの時代の宇宙について、大きく理解が進むことが期待されます。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

(注) 今回見つかった銀河候補HD1の推定赤方偏移はz=13.3でした。赤方偏移は宇宙論的距離を表す際に使われる指標です。Planck 観測機チームが2015年に公表した宇宙論パラメータ (Planck Collaboration 2016, "Planck 2015 results. XIII.Cosmological parameters", "TT,TE,EE+lowP+lensing+ext" in Table 4; H0 =67.74 km/s/Mpc, Ωm=0.3089, ΩΛ=0.6911) を用いて赤方偏移から距離を計算すると134.8億光年となり、HD1は134.8億年前に存在していたことになります。一方で宇宙は膨張していますので、現在の宇宙では我々とこの銀河候補の距離は134.8億光年以上になります。参考としてGN-z11は赤方偏移がz=11.0で、133.8億光年かなたの宇宙に存在しています。また今回の研究ではHD1の他に、134.4億光年かなた (赤方偏移z=12.3) に存在する銀河の候補、HD2も見つかっており、こちらもジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による観測が行われる予定です。

 

【論文情報】

雑誌名:The Astrophysical Journal (4月8日掲載予定)
論文タイトル:A Search for H-Dropout Lyman Break Galaxies at z~12-16
著者: Yuichi Harikane, Akio K. Inoue, Ken Mawatari, Takuya Hashimoto, Satoshi, Yamanaka, Yoshinobu Fudamoto, Hiroshi Matsuo, Yoichi Tamura, Pratika Dayal, L. Y. Aaron Yung, Anne Hutter, Fabio Pacucci, Yuma Sugahara, and Anton M. Koekemoer
DOI番号:10.3847/1538-4357/ac53a9
URL:https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ac53a9
   https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/2021arXiv211209141H/abstract