TOP   >   農学   >   記事詳細

農学

2022.06.15

ネコのマタタビ反応の謎を解く 第2弾! ~完全肉食のネコがマタタビを舐めたり噛んだりする理由が明らかに~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学は、国立大学法人 岩手大学、英国リバプール大学との共同研究で、ネコのマタタビ反応に特徴的なしぐさとして見られる葉を舐めたり噛んだりする行動には、マタタビに対するネコの反応性を増大させる効果があり、マタタビの持つ蚊の忌避活性も強めることを解明しました。これは名古屋大学西川俊夫教授、岩手大学宮崎雅雄教授、同大上野山怜子大学院生、リバプール大学ジェーンハースト教授らのグループによる研究成果です。
ネコはマタタビを見つけると、葉を舐めたり噛んだり、葉に顔や頭をこすり付けたり、葉の上でゴロゴロ転がる、といった特徴的な行動を示します。これはマタタビ反応といわれ、1950年代にネコがマタタビラクトンと呼ばれる複数の化学成分を嗅ぐと起きる現象と報告されていました。研究グループは、昨年、マタタビ反応を誘起する強力な活性物質として新たにネペタラクトールを発見し、これに蚊の忌避効果があることも突き止め、マタタビ反応をしたネコは蚊に刺されにくくなる事を報告しました。しかし、マタタビを食べるわけでもない肉食のネコが、なぜ反応中にしきりに葉を舐めたり噛んだりするのかが分かっていませんでした。本研究では、ネコの舐め噛みにより葉が傷つくことで、ネペタラクトールとマタタビラクトン類の放出量が増加するとともに、これらの成分の組成比も大きく変わることを見出しました。さらに、この組成比の変化により、ネコのマタタビに対する反応性および蚊に対する忌避活性が増強することも分かりました。以上の研究結果は、ネコがマタタビに含まれている蚊の忌避成分を最も効果的に利用できるように巧みに進化してきたことを示していると考えられます。また、ネペタラクトールを活用した蚊の忌避剤開発において、蚊の忌避活性を増強するための重要な知見となることが期待されます。本研究は、Cell Pressが出版する科学雑誌「iScience」に令和4年6月15日午前0時(日本時間)に電子版で公開されました。

 

【ポイント】

・ネコがマタタビを舐めたり噛んだりして傷つけると、蚊の忌避成分の放出量が増大する
・マタタビが傷つくと有効成分の放出量が増大するだけでなく、その組成も変化する
・この量と組成の変化に応じて、ネコは傷ついたマタタビにより強く反応するようになり、蚊の忌避効果も高まる

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【論文情報】

掲載誌:iScience(日本時間2022年6月15日付け)
論文名:Domestic cat damage to plant leaves containing iridoids enhances chemical repellency to pests
著者:Reiko Uenoyama, Tamako Miyazaki, Masaatsu Adachi, Toshio Nishikawa, Jane L. Hurst and Masao Miyazaki
DOI番号: 10.1016/j.isci.2022.104455
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S258900422200726X?via%3Dihub

 

【共同研究グループ】
岩手大学:宮崎雅雄(農学部 教授)、上野山怜子(大学院連合農学研究科 大学院生)、宮崎珠子(農学部 准教授)

名古屋大学:西川俊夫(大学院生命農学研究科応用生命科学専攻 教授)、安立昌篤(大学院生命農学研究科応用生命科学専攻 講師:研究当時)

リバプール大学(イギリス):Jane L. Hurst(リバプール大学 感染症・獣医・生態学研究所 教授)
本研究は、以下の研究事業の成果の一部として得られました。2017~2021年度文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究『化学コミュニケーションのフロンティア(領域代表者・掛谷秀昭)』の公募研究『ネコのマタタビ反応で機能する嗅覚受容体と多幸感に関わる神経回路の同定(研究代表者・宮崎雅雄)』、公益財団法人サントリー生命科学財団特別研究助成(研究代表者・宮崎雅雄)

 

【研究代表者】

http://www.agr.nagoya-u.ac.jp/~organic/