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環境学

2022.08.12

回転させた粒状斜面の履歴依存変形の実験モデル化に成功 ~小惑星表面形状変形の議論のキーとなることを期待~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院環境学研究科の入江 輝紀 博士前期課程学生(2021年卒業)、理学部第一装置開発室の山口 隆正 技術職員、大学院環境学研究科の渡邊 誠一郎 教授らの研究グループは、大阪大学理学研究科の桂木 洋光 教授との共同研究で、独自に開発した独創的な装置により、回転させた粒状斜面形状の履歴依存する変形の実験モデル化に成功しました。
本研究では、砂などの粒状物質の摩擦特性によって決定される斜面形状の荷重履歴依存性を実験的に調査しました。実験で取得した斜面形状変化を重力・遠心力・摩擦力の平衡によるモデルにフィッティングし、その結果から、遠心力と重力の比の関数として粒状摩擦係数を求め、その荷重履歴依存性を評価しています。本研究は、粒状物質斜面の回転による変形の観察のために開発された独創的な実験装置を特徴としており、装置開発等に関しても既に論文を公表しています。一連の研究成果より、粒体物質の重力や遠心力の影響による変形則、その履歴依存性、有効付着力の評価手法等が確立され、これらの結果は小惑星形状や表面地形進化の議論のキーとなることが期待されます。
本研究成果は、2022年7月9日付オランダの出版社Elsevierの国際ジャーナル「Advanced Powder Technology」電子版に掲載されました。また、本研究成果に先立ち、二編の論文※を掲載しました。

 

【ポイント】

・独自に開発した独創的な装置により、堆積した粒状物質の回転による変形を実験的に測定して、単純な力の平衡モデルにより説明した。
・変形のヒステリシス(履歴依存性注1))を観察した。
・粒状摩擦、遠心力及び充填率の関係を実験的に取得した。
・本研究成果は、小惑星形状や表面地形進化の議論のキーとなることが期待される。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)履歴依存性:
現在の状態のみでなく、過去に受けた影響に依存すること。

 

【論文情報】

雑誌名:Advanced Powder Technology
論文タイトル:History-dependent deformation of a rotated granular pile governed by granular friction
著者:入江輝紀  (名古屋大学 大学院環境学研究科 博士前期課程学生(2021年卒業))
山口隆正 (名古屋大学 理学部第一装置開発室/全学技術センター 技術職員)
渡邊誠一郎(名古屋大学 大学院環境学研究科 教授)
桂木洋光 (大阪大学 大学院理学研究科 教授)
URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0921883122002072?via%3Dihub
DOI:10.1016/j.apt.2022.103629

             
※【先行して掲載された論文①】
雑誌名: Measurement Science and Technology
論文タイトル:Measurement of surface deformation and cohesion of a granular pile under the effect of centrifugal force
著者:入江輝紀、山口隆正、渡邊誠一郎、桂木洋光
URL: https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6501/ac1b25
DOI:10.1088/1361-6501/ac1b25

              

※【先行して掲載された論文②】
雑誌名:PHYSICAL REVIEW E
論文タイトル:Deformation of a rotated granular pile governed by body-force-dependent friction
著者:入江輝紀、山口隆正、渡邊誠一郎、桂木洋光
URL: https://journals.aps.org/pre/abstract/10.1103/PhysRevE.104.064902
DOI:10.1103/PhysRevE.104.064902            

 

【研究代表者】

環境学研究科 渡邊 誠一郎 教授
https://www.eps.nagoya-u.ac.jp/~geophys/index.html