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複合領域

2022.09.20

1970年代の硫酸エアロゾルの粒径復元にはじめて成功 ~硫酸エアロゾルが雲をつくる作用の解明による、地球温暖化メカニズム研究の進展に期待~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院環境学研究科の植村 立 准教授と松井 仁志 准教授は、北海道大学低温科学研究所の飯塚 芳徳 准教授らの研究グループと共に、グリーンランドのアイスコア*1に保存されている硫酸エアロゾル*2の粒径分布の復元にはじめて成功し、人為硫黄酸化物の排出最盛期である1970年代の硫酸エアロゾルは主に0.4µmより小さかったことを解明しました。
硫酸エアロゾルの組成や粒径分布は、地球の放射収支を考える上で重要な要素です。しかし、過去の硫酸エアロゾルの組成や粒径分布については、信頼できる観測がないためほとんど情報がなく、過去のエアロゾルの組成と輸送をモデル化することに不確実性が大きいのが現状です。今回、研究グループは、グリーンランドのアイスコアに保存されている硫酸エアロゾルの粒径分布の復元に成功し、1970年代に北極で小さな硫酸塩粒子が増加したことを示す最初の観測的証拠を提示しました。今回の研究結果はエアロゾルと雲の相互作用の理解を深めるとともに、モデルにおけるパラメータ設定に新たな制約を与えるものです。これは、地球温暖化のメカニズムの理解向上につながり、将来予測の精度を高めることが期待されます。
なお、本研究成果は、2022年8月25日(木)公開のJournal of Geophysical Research, Atmospheres誌に掲載されました。

 

【ポイント】

・グリーンランドのアイスコアに保存されている硫酸エアロゾルの粒径分布の復元にはじめて成功。
・人為的な硫黄排出最盛期である1970年代の硫酸エアロゾルは主に0.4µmより小さいことを解明。
・地球温暖化のメカニズムの理解向上と、将来予測の精度を高めることに期待。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 
【用語解説】

*1 アイスコア … 極地氷床などで鉛直方向にくり貫かれる円柱状の氷試料のこと。
*2 エアロゾル … 気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子と周囲の気体の混合体。

 

【論文情報】

論文名 High flux of small sulfate aerosols during the 1970s reconstructed from the SE-Dome ice core in Greenland(グリーンランド南東ドームアイスコアから復元された1970年代の小粒径硫酸エアロゾルの高フラックス)
著者名 飯塚芳徳1、植村 立2、松井仁志2、大島 長3、川上 薫1,4、服部祥平5,6、大野 浩7、的場澄人11北海道大学低温科学研究所、2名古屋大学環境学研究科、3気象庁気象研究所、4北海道大学環境科学院、5東京工業大学、6南京大学、7北見工業大学地球環境工学科)
雑誌名 Journal of Geophysical Research, Atmospheres(地球物理学の専門誌)
DOI 10.1029/2022JD036880
URL https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2022JD036880
公表日 2022年8月25日(木)(オンライン公開)

 

【研究代表者】

大学院環境学研究科 植村 立 准教授
http://has.env.nagoya-u.ac.jp/~uemura/