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複合領域

2022.09.13

一度大きな騒音にさらされると音が小さくなっても無意識のストレスは低減されにくい ~ドローンや空飛ぶクルマが社会に受け入れられるために~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院工学研究科の原 進 教授、同大学未来社会創造機構の上出 寛子 特任准教授らの研究グループは、慶應義塾大学理工学部の満倉 靖恵 教授との共同研究で、大量のドローンや人を乗せた空飛ぶクルマが普及する「空の産業革命」注2)が健全に社会に受け入れられる上で重要なファクターとなる騒音とストレスの関係について新たな発見をしました。
本研究では、空飛ぶクルマが頭上を飛行する様子を体感できるシミュレータを用意し、影響の大きい「騒音」について、意識的なアンケート調査と簡易脳波計測に基づく無意識的な感性アナライザによるストレス度評価を比較しました。
比較した結果、一度大きな騒音にさらされた後、音を小さくすると、アンケートではストレスが解消される傾向を示すのに対して、感性アナライザでは無意識のストレスが解消されにくいことを明らかにしました。
このことは、空のインフラを展開させる上でのガイドライン策定や、地上社会にやさしい革新的機体を生み出す上で重要な知見になるものと期待されます。
本研究成果は、2022年9月7日付一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)発行技術論文集「Technical Journal of Advanced Mobility」(https://uas-japan.org/journal/)に掲載されました。

 

【ポイント】

・空飛ぶクルマが頭上を飛行する様子を体感できるシミュレータを用い、影響の大きい「騒音」について、意識的なアンケート調査と簡易脳波計測に基づく無意識的な感性アナライザ注1)によるストレス度評価を比較した。
・比較した結果、一度大きな騒音にさらされた後、音を小さくするとアンケートではストレスが解消される傾向を示すのに対して、感性アナライザでは無意識のストレスが解消されにくいことを明らかにした。
・空のインフラを展開させる上でのガイドライン策定や、地上社会にやさしい革新的機体を生み出す上で重要な知見になることが期待される。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)感性アナライザ:
慶應義塾大学満倉靖恵教授と企業が開発した、簡易脳波計測に基づく感性の評価装置。簡単な脳波計とタブレットだけで計測が可能。持ち運びや装着が従来の脳波計と比較して極めて容易になっている。五つの感性(興味、好き、ストレス、集中、沈静)がどこでもリアルタイムで評価可能であり、これまでさまざまな商品開発、市場調査などに活用されている。

 

注2)空の産業革命:
ドローンや空飛ぶクルマなどの新しい空のインフラ(エアモビリティ)が高度に普及することで発生する物流や人の移動に関する革新的変化のこと。2015年に設置された官民協議会において、無人航空機に関する政府の取り組みを議論の上、工程表として取りまとめた「空の産業革命に向けたロードマップ」を公表することになった。

 

【論文情報】

雑誌名:Technical Journal of Advanced Mobility (https://uas-japan.org/journal/)
論文タイトル:Noise-Induced Stress Assessment ―On the Difference Between Questionnaire-Based and EEG Measurement-Based Evaluations―
著者:Susumu HARA (Nagoya University), Yasue MITSUKURA (Keio University) and Hiroko KAMIDE (Nagoya University)
DOI: 10.34590/tjam.3.6_81                               
URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/tjam/3/6/3_81/_article 

 

【研究代表者】

大学院工学研究科 原 進 教授
http://jupiter.nuae.nagoya-u.ac.jp/index.html