地球の自転速度は少しずつ遅くなっています。しかもその速度変化は一定ではなく、詳細は分かっていません。過去の地球自転速度は、古い時代の皆既日食などの記録を使って求めることができます。地球の自転速度に応じて日食が見える場所は変化するため、正確な観測地、時間、見え方を伝える記録があれば、過去のある時点での地球の自転速度を求めることができるわけです。しかし、すべての時代において、これらの情報に関する信頼できる記録があるわけではありません。特に、西暦4世紀から7世紀については、検討対象となり得る皆既日食の記録が極めて少なく、当時の地球の自転速度については不明な点が少なくありません。
本研究では、存在は知られていたものの、これまであまり分析が進んでいなかった、東地中海沿岸のビザンツ(東ローマ)帝国の皆既日食記録を探索、検討し、4~7世紀における、地球の自転速度の変動の様子を明らかにしました。これにより、地球の自転速度の減速が、これまで考えられていた以上に不規則であった可能性が示唆されました。過去の皆既日食の記録の調査を進めることで、さらに長期にわたる地球の自転速度を、より正確に復元できると考えられます。このような情報は、過去の歴史的天文記録の信憑性評価に用いることができるだけでなく、長期的スパンでの地球上の海水準変化、地球の内部構造の変化、極地の氷の増減など、地球の自転速度変化が関与するような地球環境変動の理解にも役立つと期待されます。
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掲載論文
【題 名】 The variable Earth’s rotation in the 4th ~ 7th centuries: New ΔT Constraints from Byzantine eclipse records.
(4-7世紀における地球の自転速度変化:ビザンツ日食記録による新ΔT制限値)
【著者名】 Hisashi Hayakawa*(名古屋大), Koji Murata*(筑波大), and Mitsuru Sôma(国立天文台) (*= co-first author)
【掲載誌】 Publications of the Astronomical Society of the Pacific
【掲載日】 2022年9月13日
【DOI】 10.1088/1538-3873/ac6b56
【URL】 https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1538-3873/ac6b56