国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院工学研究科の平井 大悟郎 准教授、小島 慶太 博士後期課程学生、片山 尚幸 准教授、東京大学物性研究所の河村 光晶助教、浜根 大輔 技術専門職員、廣井 善二 教授らの研究グループは、リン化ルテニウムという無機固体中でルテニウムが三つ直線状に繋がった分子が形成されることで金属から絶縁体へ変化することを新たに発見しました。この分子は従来とは異なるタイプで、固体中では多様な分子が形成されることが明らかになりました。
ある種の無機固体の中では、水素分子のように二つの電子を取り込んで二つの金属の間に強い化学結合が形成されることが知られています。また、もともと物質中を自由に動き回っていた電子が、結合を作るために分子に取り込まれるので、結合ができると同時に電気が流れなくなります。
本研究では、固体中での分子の形成や乖離は室温付近でも起こり、電気伝導や反射率を急激に変化させるため、固体中分子の性質を利用したセンサーやスイッチングデバイスへの応用が期待されます。
本研究成果は、2022年9月16日付アメリカ化学会の学術誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載されました。
・リン化ルテニウム（RuP） 注1）という無機固体中で、ルテニウムが三つ直線に繋がった分子を作り電子を捉えることで、金属から絶縁体へスイッチすることを発見した。
・これまで固体中で見つかった分子のほとんどは水素分子のように二つの原子が二つの電子によって結合していたのに対して、三つの原子が四つの電子で繋がる新しいタイプの分子を発見した。
・分子の形成や乖離によって電気伝導を急激にスイッチできるので、固体中の多様な分子を利用したセンサーやスイッチングデバイスへの応用が期待される。
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注1）リン化ルテニウム（RuP）：
化学式RuPで表される、窒素族元素のリンと遷移金属元素のルテニウムが1対1の比で反応してできる無機化合物。室温では金属光沢があり、よく電気を流す。
雑誌名：Journal of the American Chemical Society
論文タイトル：Linear Trimer Molecule Formation by Three-Center-Four-Electron Bonding in a Crystalline Solid RuP
著者：平井大悟郎，小島慶太，片山尚幸（名古屋大工学部），河村光晶，浜根大輔， 廣井善二（東京大物性研）
DOI：10.1021/jacs.2c06173
URL：https://pubs.acs.org/doi/10.1021/jacs.2c06173
