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工学

2022.11.17

世界初!「ゲート吸着材」を用いたCO2吸着回収プロセスのモデルベースの開発 ~カーボンリサイクル社会の実現に向けた貢献が期待~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院工学研究科の川尻 喜章 教授、高倉 有矢 博士後期課程学生、藤木 淳平 特任講師らの研究グループは、日本製鉄株式会社の上代 洋 上席主幹研究員との共同研究により、近年注目されている新材料である「ゲート吸着材」を用いたCO2回収プロセスのシミュレーション技術を確立し、既存分離材に対する優位性を明らかにしました。
気候変動問題への対策として、温室効果ガスであるCO2を含む工場や火力発電所の排ガス中からCO2を分離回収する技術の開発が進められています。将来の大規模なCO2分離回収の実施のためには、省スペース・省エネルギーなCO2分離技術の開発が重要であることから、非常に優れた吸着特性を示す新材料「ゲート吸着材」が注目を集めています。しかし、「ゲート吸着材」を用いたプロセスシミュレーションは計算が煩雑なため、これまで実施されてきませんでした。
本研究では、プロセスシミュレーションの実施を妨げていた計算上の課題を解決し、「ゲート吸着材」を用いたプロセスシミュレーションを実施し、「ゲート吸着材」がプロセスとしても優れたCO2回収性能を発揮することを確認しました。
本技術は、カーボンリサイクル社会の実現に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2022年11月14日付アメリカ化学誌「ACS Sustainable Chemistry & Engineering」に掲載されました。

 

【ポイント】

・高性能なCO2分離材として近年注目されている「ゲート吸着材注1)」を用いたCO2回収プロセスを、世界で初めて、分離装置実機の動作を想定した動的シミュレーションにより評価した。
・従来型CO2分離材と比較して、「ゲート吸着材」を用いたプロセスが、1/5程度の分離材使用量(装置小型化)で、かつ消費電力を39%削減できる可能性を見出した。
・「ゲート吸着材」により創出される省スペース・省エネルギーなCO2回収プロセスは、集中排出源から安価にCO2を回収し、多様な化成品や燃料として再利用するカーボンリサイクル社会の実現に向けた貢献が期待される。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)ゲート吸着材:
一定のガス圧で、吸着量が変化する現象(ゲート現象)を示す吸着材の総称。一定のガス圧以上でガスを吸着させた後、ガス圧を一定以下にする操作で、吸着されていたガスが容易に回収できる利点を有する。ゲート現象は、構造に柔軟性がある多孔性配位高分子が示す特異的な性質。

 

【論文情報】

雑誌名:ACS Sustainable Chemistry & Engineering
論文タイトル:Model-based analysis of highly efficient CO2 separation process using flexible metal-organic frameworks with isotherm hysteresis
著者:Yuya Takakura, Saeki Sugimoto, Junpei Fujiki, Hiroshi Kajiro, Tomoyuki Yajima, Yoshiaki Kawajiri* (*は責任著者) ※本学関係者は下線
DOI: 10.1021/acssuschemeng.2c05058
URL: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acssuschemeng.2c05058

 

【研究代表者】

大学院工学研究科/未来社会創造機構 川尻 喜章 教授
https://www.material.nagoya-u.ac.jp/process_info_eng/