数物系科学
2022.11.18
新しい原理のMI磁気センサーを使った観測システムで微小な地磁気変動の観測に成功 ~宇宙天気研究を加速~
国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学宇宙地球環境研究所の能勢 正仁 准教授は、愛知製鋼株式会社(愛知県東海市)との共同研究で、磁気インピーダンス効果(MI効果)注1)と呼ばれる新しい原理を用いて、地球磁場を計測するための観測システムを開発しました。このシステムを1か月間、屋外に設置して継続観測を行い、地球磁場の大きさの約10万分の1という非常に微弱な地磁気変動を捉えることに成功しました。
宇宙空間で生じている様々な現象は、プラズマ中の電磁波動として、地球の磁場に沿って伝わってくるため、地上では微弱な地磁気変動を引き起こします。そのため、本研究で開発したMI磁気センサー注2)を使えば、地上に居ながらにして、宇宙空間で起こった現象を調査することができます。またこの観測システムは、低コスト・軽量・省電力であるため、複数箇所で地磁気の同時観測を行うことが容易であり、宇宙天気研究を一層加速すると期待されます。
本研究成果は、2022年10月14日付アメリカ地球科学連合の学術誌「地球物理学研究誌・宇宙物理学(Journal of Geophysical Research-Space Physics)」に掲載されました。
・産学共同で、新しい原理のMI磁気センサーを使った観測システムを開発し、微小な地磁気変動を地上で捉えることに成功。
・こうした地磁気変動は、宇宙空間で起こっているプラズマ現象と密接に関係しており、地上に居ながらにして、宇宙天気の状況を知ることができる。
・この観測システムは、低コスト・軽量・省電力であるため、多点観測ネットワークの構築が容易であり、宇宙環境モニタリングや宇宙天気研究をより一層加速することが期待できる。
◆詳細(プレスリリース本文)はこちら
注1)磁気インピーダンス効果(MI効果):
アモルファスワイヤ(結晶のような整然とした秩序はないが、局所的には秩序性がある状態の極細金属繊維)にパルス電流を通電するとき、インピーダンス(電気抵抗)が外部磁界によって高感度に変化する電磁気現象のこと。
注2)MI磁気センサー:
磁気インピーダンス効果をもとに、愛知製鋼が開発・量産に成功した磁気センサー。
高感度、高速応答、低消費電力、小型などの優れた特性を持つ。
雑誌名:Journal of Geophysical Research-Space Physics
論文タイトル:Application of magneto-impedance (MI) sensor to geomagnetic field measurements
著者: Nosé, M.(能勢正仁・名古屋大学), T. Kawano(河野剛健・愛知製鋼), and H. Aoyama(青山均・愛知製鋼)
DOI:10.1029/2022JA030809
URL:https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2022JA030809
宇宙地球環境研究所 能勢 正仁 准教授
https://www.isee.nagoya-u.ac.jp/~nose.masahito/