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数物系科学

2022.12.27

世界屈指の安定観測で太陽活動復元へ貢献 ~川口市立科学館所蔵の40年間の太陽観測記録の分析から~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院高等研究院/宇宙地球環境研究所の早川 尚志 特任助教らの研究グループは、川口市立科学館(埼玉県)、国立天文台、ベルギー王立天文台(ベルギー王国)らとともに、川口市立科学館に保管されている過去40年の太陽観測記録を分析しました。
その結果、同館所蔵の太陽観測記録は、(1)ベルギー王立天文台の黒点相対数・太陽長期観測世界データセンター(SILSO)が把握したものよりも分量が多いこと、(2)全ての観測が、川口市立科学館の同一人物の観測記録であること(世界でもかなり稀な事例である)、(3)世界各地の長期黒点観測者のデータと比べても、世界屈指の安定性を誇ることを明らかにしました
太陽黒点観測に基づく黒点相対数注1)は、直接観測ベースでの太陽活動の長期変動を復元する上で、過去数世紀にわたる情報を提供し得る非常に貴重なデータです。
近年の研究では、太陽活動の復元には、個別観測の較正などの問題、復元結果が必ずしも一致するとは限らない問題がありました。その問題を克服するために重要なことは、個別観測者による均質性の高い観測データです。
同館の観測記録は、その世界屈指の安定性から、現在進行中の過去数世紀の太陽活動の再較正の試みに大きく寄与する可能性があります。また、同館のオリジナルの黒点スケッチ記録は、太陽活動の長期変動のみならず、短期的な宇宙天気現象の理解にも寄与し得る可能性が期待されます。
なお、この黒点スケッチ記録は、川口市立科学館のWEBサイトで公開しました。
この研究成果は、2022年12月26日午前0時(日本時間)付イギリス科学雑誌「Geoscience Data Journal」オンライン版に掲載されました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)黒点相対数:
太陽の磁場活動を評価する指標で、太陽面の可視半球上に現れる黒点群の数(G)と個別黒点の数(F)について、黒点相対数をRとした時、R = G+10Fで定量化したもの。19世紀にスイスのルドルフ・ウォルフが考案して以来太陽活動の定量評価に用いられている。

 

【論文情報】

雑誌名:Geoscience Data Journal
論文タイトル:Sunspot observations at Kawaguchi Science Museum: 1972 ?2013
著者:早川尚志 (名古屋大学), 鈴木大輔(川口市立科学館), Sophie Mathieu(ベルギー王立天文台), Laure Lef?vre(ベルギー王立天文台), 詫間等(川口市立科学館), 日江井榮二郎(国立天文台)
DOI: 10.1002/gdj3.158       
URL: https://rmets.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/gdj3.158

 

【研究代表者】

高等研究院/宇宙地球環境研究所 早川 尚志 特任助教