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農学

2022.12.14

トマトの果実の形を変えるゲノム編集技術を開発 ~ゲノム編集によりピーナッツ型のユニークな形のトマトの作出に成功~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院生命農学研究科の白武 勝裕 准教授らの研究グループは、金沢大学の伊藤 正樹 教授、華中農業大学(中国)の鄭慶游 博士らとの共同研究により、トマトの果実で、細胞分裂を制御している転写因子SlMYB3R3の遺伝子を、CRISPR-Cas9注3)を用いたゲノム編集により機能破壊することで、ピーナッツ型のユニークな形のトマトの開発に成功しました。
私たちは、野菜を美味しさや栄養摂取の目的だけに食べるのではなく、様々な形や色の野菜で食卓を彩り、野菜を目でも楽しんでいます。トマトは消費者に人気が高い野菜のひとつです。
多様な形や色のトマトを消費者に届けるためには、形や色を司る遺伝子を特定し、その情報を活用した画期的な品種改良技術が必要です。本研究では、SlMYB3R3がトマトの形の決定に関わることを特定し、その遺伝子をゲノム編集することで、トマトの形を変化させることができることを明らかにしました。本技術の活用により、これまでにない形のトマトを消費者に届けることができるようになることが期待されます。
本研究成果は、2022年12月8日付国際科学雑誌「Journal of Experimental Botany」に掲載されました。

 

【ポイント】

・トマトは消費者に人気が高い野菜であり多種多様な形や色の品種が求められている。
・果実の形の決定に細胞分裂を制御する転写因子注1)SlMYB3R3が関わることを発見。
・SlMYB3R3遺伝子のゲノム編集注2)により、ピーナッツ型のユニークな形のトマトの開発に成功。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)転写因子:
遺伝子の上流には、遺伝子の発現(遺伝子からのmRNAの転写)の調節に関わるプロモーターが存在する。このプロモーターに結合して、遺伝子の発現を促進あるいは抑制するタンパク質を転写因子という。

 

注2)ゲノム編集:
生物の設計図であるゲノムの中のターゲットとする塩基配列を、特異的に変化させる技術。

 

注3)CRISPR-Cas9:
2020年のノーベル化学賞の発見となったゲノム編集技術のひとつ。ターゲットとするゲノム塩基配列の相補鎖のRNA配列を使って、ターゲットとするゲノム塩基配列を認識させることにより、従来の技術より格段に、ゲノム編集を容易に行うことが可能となった。

 

【論文情報】

雑誌名:Journal of Experimental Botany
論文タイトル:Genome editing of SlMYB3R3, a cell cycle transcription factor gene of tomato, induces elongated fruit shape
著者:Qingyou Zheng1,2, Rie Takei-Hoshi1, Hitomi Okumura1, Masaki Ito3, Kohei Kawaguchi1, Shungo Otagaki1, Shogo Matsumoto1, Zhengrong Luo2, Qinglin Zhang2, and Katsuhiro Shiratake1(所属:名古屋大学1,華中農業大学2,金沢大学3
DOI:10.1093/jxb/erac352
URL:https://academic.oup.com/jxb/article/73/22/7312/6693846

 

【研究代表者】

大学院生命農学研究科 白武 勝裕 准教授
https://www.agr.nagoya-u.ac.jp/~hort/shira/top/top.html