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工学

2022.12.16

蒸気プラズマによる金属炭化物のドライエッチングに成功 ~シリコン半導体集積回路材料の最先端微細加工技術を実現~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学低温プラズマ科学研究センターのティ・トゥイ・ガー グエン 特任助教、堀 勝 教授、石川 健治 教授らの研究グループは、(株)日立製作所と(株)日立ハイテクとの共同研究で、フローティングワイヤープラズマへのアンモニア水蒸気導入により、3元金属炭化物(TiAlC)の表面変質層を形成し、この材料を揮発除去するドライエッチングに成功しました。本共同研究グループは、世界に先駆けて、シリコン半導体ゲート電極材料に用いられている金属窒化物の化学的ドライエッチングを実現してきました。今回、その技術をさらに進化させ、最先端シリコン半導体材料として有望である3元金属炭化物の原子層レベルでの微細加工に成功しました。
本研究で、スマートフォンやデータセンターで使用される、シリコン半導体集積回路の高性能化と、低消費電力化に必要なプラズマプロセス注4)による材料の最先端微細加工技術を実現しました。この技術は、Society 5.0にて提唱されるスマートソサエティーに向けた技術開発が推進されることが期待されます。
本研究成果は、2022年11月26日付国際科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。

 

【ポイント】

・高密度フローティングワイヤープラズマ注1)を用いるドライエッチング注2)技術を開発。
・3元金属炭化物(TiAlC)注3)の揮発除去を実現。
・次世代シリコン半導体の加工の基盤技術として有望。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)フローティングワイヤプラズマ:
ガラス容器の中に,電気的に浮遊している導電性の細線(フローティングワイヤー)を設置して、その細線に高周波を誘導結合で電力を印加して、容器内に広範囲にプラズマを生成する方法。プラズマ生成する圧力範囲が大気圧(105 Pa)から低圧(数Pa)までと幅広く、特にこれまで困難とされている数100Paから数104 Paの圧力範囲で、高密度(~1015 cm-3)プラズマが生成でき、蒸気を原料とするプラズマの生成も実現可能とする独自開発した手法。

 

注2)ドライエッチング:
被加工材料をガス化して物質を除去する技術のこと。薬液を使って材料を溶解する場合はウェットエッチングなどと呼ばれ、水洗などの溶液プロセスが不要なため、ドライエッチングと呼ばれる。

 

注3)3元金属炭化物(TiAlC):
本研究ではTiとAl、Cの3種類の元素を含んだ化合物のことで、金属元素であるTiとAlの両方を含む炭化物である。単純な炭化物は、TiCやAlCなどの化学式で表される化合物である。一般的には、TiとAl以外の金属元素を含んだ元素組成の組み合わせをもつ炭化物のこと。

 

注4)プラズマプロセス:
高周波放電などによりガスをプラズマ化して、ガスを原料とする化学活性なイオンや電荷中性化学種(ラジカルと総称)を用いて、熱反応に依らずに、基板温度を比較的低温のままで、被加工物となる機能性材料に損傷を与えずに化学プロセス(製膜やエッチング)する方法。

 

【論文情報】

雑誌名:Scientific Reports (Nature Springer社 学術雑誌)
論文タイトル:Dry etching of ternary metal carbide TiAlC via surface modification using floating wire-assisted vapor plasma
著者:Thi-Thuy-Nga Nguyen, Kenji Ishikawa,Masaru Hori(名古屋大学)
   Kazunori Shinoda, Hirotaka Hamamura(日立製作所)
   Kenji Maeda, Kenetsu Yokogawa, Masaru Izawa(日立ハイテク)
DOI: 10.1038/s41598-022-24949-1  
URL: https://www.nature.com/articles/s41598-022-24949-1

 

【研究代表者】

低温プラズマ科学研究センター/大学院工学研究科 堀 勝 教授
http://horilab.nuee.nagoya-u.ac.jp