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国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学の鳥居啓子主任研究者・客員教授、京都産業大学の池松朱夏博士研究員、木村成介教授らの共同研究グループは、水陸両生植物Rorippa aquatica(ロリッパ・アクアティカ)を用いて、植物ホルモン・エチレンの働きにより、水没という環境変化が機敏に感知され、葉の気孔の形成にかかわる遺伝子の発現が抑制されるという「気中葉から水中葉への運命転換の仕組み」を突き止めました。
本研究成果は、植物に備わっている能力を用いることにより、環境変動下でも継続的に生産が可能な農業の実現につながることが期待されます。Cell プレス社が発行する国際学術雑誌Current Biology(2023年1月25日付(日本時間) )に掲載されました。

 

【ポイント】

・ 水陸両生植物Rorippa aquaticaは、水没により逃げ場を失った植物ホルモン「エチレン」が体内に蓄積されることで環境の変化を機敏に感知することがわかった。
・生理学的解析および次世代シークエンサーを使った遺伝子発現解析により、水没時の非常に迅速な「気中葉から水中葉への運命転換の仕組み」を解明した。特に、Rorippa aquaticaでは水中生活につながる進化の過程において、陸上で生育する植物が持つエチレン応答経路や光応答経路がつなぎかわり、水没時に葉の表皮の気孔の形成に関わる遺伝子の発現を抑制する仕組みを獲得したことを明らかにした。
・ 植物に備わっている環境の変化に機敏に応答する仕組みを知ることは、気候変動から植物を護る方法や、環境が変化しても生産性が落ちない農作物の実現を考えるうえで有用な手がかりになる。
 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【論文情報】

論文タイトル
Rewiring of hormone and light response pathways underlies the inhibition of stomatal development in an amphibious plant Rorippa aquatica underwater
(水陸両生植物Rorippa aquaticaの水没に応答した気孔分化抑制のメカニズムは、陸生祖先種の植物ホルモン応答経路と光応答経路を再配線(つなぎかえ)することで獲得された)
掲載誌
国際学術誌 Current Biology (Impact Factor: 10.834)
掲載日時
2023年1月25日(水)午前 1:00(日本時間)
著者
(1筆頭著者、2責任著者)
1Shuka Ikematsu, Tatsushi Umase, Mako Shiozaki, Sodai Nakayama, Fuko Noguchi, Tomoaki Sakamoto, Hongwei Hou, Gholamreza Gohari, 2Seisuke Kimura, 2Keiko U. Torii
DOI
10.1016/j.cub.2022.12.064.
URL
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0960982222020012?via%3Dihub

 

【研究代表者】

トランスフォーマティブ生命分子研究所 鳥居 啓子 主任研究者/客員教授
https://www.plant-stomata.org