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農学

2023.01.19

アフリカの栽培イネが芒(のぎ)を失った理由 ~アジアとアフリカで異なる遺伝子の選抜が起きたことを解明~

人類はおよそ1万年かけて、野生イネを改良して栽培に適したものにしてきました。イネはアジアとアフリカの2地域で独立に栽培化されましたが、その標的となった表現型は両者で共通するものが多く、芒の喪失もその1つでした。国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学生物機能開発利用研究センターの芦苅基行教授らは、東北大学大学院生命科学研究科の別所-上原助教とそのほかの共同研究チームと共に、栽培化の過程でアフリカイネが芒(のぎ、種子先端にできる突起状構造物)を失う原因となった遺伝子変異を同定しました。これまでに研究チームは、アジアイネの芒喪失にRAE1RAE2の2つの遺伝子の機能欠損が重要であったことを示してきましたが、アフリカイネの芒喪失については詳しくわかっていませんでした。本研究では、アフリカイネにおける芒喪失はRAE3という遺伝子の機能欠損が原因であったことを示しました。これまでアジアイネとアフリカイネの栽培化関連形質は、同じ遺伝子の異なる変異が選抜されることにより達成されてきたと報告されていましたが、今回初めて、アジアイネとアフリカイネで共通の栽培化形質(芒の喪失)が異なる遺伝子変異の選抜によってもたらされたことを明らかにしました。
この研究成果は、2023年1月17日付で米国科学雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」電子版に掲載されました。

 

【ポイント】

○ イネの芒(のぎ)は種子先端に形成される突起状の構造物で、野生イネでは自然状況下において種子の拡散や種子の保護に役立っている。
○ イネはアジアとアフリカの2地域で独立に栽培化されたが、どちらの地域のイネでも芒は栽培化の過程で失う方向に選抜された。
○ アジアイネとアフリカイネでは異なる遺伝子が選抜されることにより、芒喪失という共通の表現型を達成することができた。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【論文情報】

題目:REGULATOR OF AWN ELONGATION 3, an E3 ubiquitin ligase, is responsible for loss of awns during African rice domestication

 

著者: Kanako Bessho-Uehara, Kengo Masuda, Diane R. Wang, Rosalyn B. Angeles-Shim, Keisuke Obara, Keisuke Nagai, Riri Murase, Shin-ichiro Aoki, Tomoyuki Furuta, Kotaro Miura, Jianzhong Wu, Yoshiyuki Yamagata, Hideshi Yasui, Michael B. Kantar, Atsushi Yoshimura, Takumi Kamura, Susan R. McCouch, Motoyuki Ashikari*
*責任著者

 

筆頭著者情報:(氏名、所属):別所-上原奏子(東北大学大学院生命科学研究科)
雑誌:Proceedings of the National Academy of Sciences
DOI:https://doi.org/10.1073/pnas.2207105120
URL:https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2207105120

 

著者所属
東北大学・大学院生命科学研究科(別所-上原奏子)
名古屋大学・生物機能開発利用研究センター(永井啓祐、芦苅基行)
名古屋大学・大学院生命農学研究科(増田健吾、村瀬李梨)
名古屋大学・農学部(青木振一郎)
名古屋大学・大学院生命理学研究科(小原圭介、嘉村巧)
岡山大学・資源植物科学研究所(古田智敬)
九州大学・大学院農学研究院(山形悦透、安井秀、吉村淳)
福井県立大学・生物資源学部(三浦孝太郎)
農業・食品産業技術総合研究機構(呉健忠)
パデュー大学・農学部(Diane R. Wang)
テキサス工科大学・植物土壌科学部(Rosalyn B. Angeles-Shim)
ハワイ大学・熱帯植物土壌科学部(Michael B. Kantar)
コーネル大学・植物遺伝育種学部(Susan R. McCouch)

 

【研究代表者】

生物機能開発利用研究センター 芦苅 基行 教授
http://motoashikari-lab.com