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工学

2023.02.20

究極な薄さの強誘電体原子膜の合成に成功 ~60℃の低温水溶液プロセスで実現、デバイスの小型化にむけて期待~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学未来材料・システム研究所の長田 実 教授らの研究グループは、水溶液プロセスにより60℃という低温で、単位格子数個の厚みを有する、チタン酸バリウム(BaTiO3)ナノシートの合成に成功しました。さらに、ナノシート1枚での強誘電特性の評価を行ったところ、強誘電特性は単位格子3個に相当する厚さ1.8 nmの原子膜まで維持されることを確認しました今回確認された単位格子3個の強誘電体注4)は、自立膜としては最も薄い膜厚であり、超薄膜における特異機能の解明やデバイスの小型化に重要な指針を与えるものと期待されます。
本研究成果は、2023年2月14日付材料科学学術国際誌「Advanced Electronic Materials」オンライン版に掲載されました。

 

【ポイント】

・単位格子注1)数個の厚みを有する、チタン酸バリウム(BaTiO3注2)ナノシート注3)の合成に成功。
・60℃の低温水溶液プロセスで、ナノシートの合成を実現。
・厚さ1.8 nm(単位格子3個に相当)のBaTiO3で、強誘電特性を確認。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 
【用語説明】

注1)単位格子:
結晶をつくっている格子の最小単位。結晶内での原子や分子、イオンの配列構造を表したものを格子(あるいは結晶格子)といい、格子で最小の繰り返し単位を単位格子という。

 

注2)チタン酸バリウム(BaTiO3):
化学式BaTiO3で表されるペロブスカイト構造を持つ強誘電体。極めて高い誘電率をもつことから積層セラミックスコンデンサなどの誘電体として広く利用されている。

 

注3)ナノシート:
原子1層、数層からなる物質。代表する物質としては、グラフェン、六方晶BN、遷移金属カルコゲナイド(MoS2、WS2など)、酸化物ナノシートなどがある。

 

注4)強誘電体:
誘電体の一種で、外部より与える電圧の向きに応じて電気分極が反転し、しかも電圧がゼロでも分極が保たれる物質。代表的な物質に、チタン酸バリウムBaTiO3、チタン酸ジルコン酸鉛Pb(Zr,Ti)O3などがあり、コンデンサ、メモリ、アクチュエーター、センサなどに利用されている。

 

【論文情報】

論文誌:Advanced Electronic Materials
論文タイトル:Molecularly Thin BaTiO3 Nanosheets with Stable Ferroelectric Response
著者:Kazuki Hagiwara (元名古屋大学大学院生), Ki Nam Byun (名古屋大学大学院生) , Shu Morita (名古屋大学大学院生), Eisuke Yamamoto (名古屋大学助教), Makoto Kobayashi (名古屋大学准教授), Xiaoyan Liu (重慶科技学院・中国科学院・教授), Minoru Osada (名古屋大学教授)    
DOI: 10.1002/aelm.202201239
URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/aelm.202201239

 

【研究代表者】

未来材料・システム研究所 長田 実 
https://mosada-lab-nagoya.com