TOP   >   工学   >   記事詳細

工学

2023.06.01

L-アンセリンはヒト由来培養筋組織の収縮力を向上させる ~サルコペニア予防に寄与する成分を独自の評価系で発見~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院工学研究科の清水 一憲 准教授、永井 研迅 博士後期課程学生(兼:サントリーウエルネス株式会社研究員)、本多 裕之 教授らの研究グループは、サントリーウエルネス株式会社との共同研究で、L-アンセリンが、サルコペニア予防に寄与できる可能性を新たに発見しました。
超高齢社会である日本では、サルコペニアや廃用性筋萎縮に伴う筋力低下が問題になっています。こうした背景から筋力低下を予防する食品成分が求められています。我々は、回遊魚や鳥類に多く含まれており、様々な食品から摂取されている成分かつ、多様な生理活性が報告されているL-アンセリンに着目しました。本研究では、L-アンセリンがヒト由来骨格筋細胞の筋分化を促進し、筋収縮力を増大させることを、2次元培養および独自デバイスを用いた3次元培養で明らかにしました。
本研究は、食経験豊富なL-アンセリンが、ヒト由来骨格筋細胞の分化注4)および収縮力を増強することを示した初めての研究成果であり、L-アンセリンがサルコペニア予防に寄与することが期待されます。
本研究成果は、2023年5月31日付アメリカ化学会が出版する雑誌「Journal of Agricultural and Food Chemistry」に掲載されました。

 

【ポイント】

・L-アンセリン注1)が、初代ヒト骨格筋細胞の分化と筋収縮力を増強することを見出した。
・L-アンセリンが、サルコペニア注2)予防に寄与できる食品成分である可能性を示した。
・独自のマイクロデバイス注3)を用いた収縮力評価系が、サルコペニア予防に資する食品成分の評価に利用できることを示した。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1) L-アンセリン:
回遊魚や鶏肉に含まれるイミダゾールジペプチドの1つ。

 

注2) サルコペニア:
加齢による筋肉量の減少および筋力の低下のこと。

 

注3) 独自のマイクロデバイス:
シリコーンの一種であるPDMS(ポリジメチルシロキサン)で作成した筋収縮力が測定可能な独自のデバイス。

 

注4) 分化:
細胞が特定の目的を果たすために形態や機能を変化させる過程。

 

【論文情報】

雑誌名:Journal of Agricultural and Food Chemistry
論文タイトル:L-Anserine increases muscle differentiation and muscle contractility in human skeletal muscle cells
著者:永井 研迅1,2, 井田 正幸1, 出雲 貴幸1, 中井 正晃1, 本多 裕之2, 清水 一憲2
1サントリーウエルネス株式会社 生命科学研究所
2名古屋大学大学院 工学研究科
DOI: 10.1021/acs.jafc.3c01685
URL: https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acs.jafc.3c01685

 

【研究代表者】

大学院工学研究科 清水 一憲 准教授
https://www.chembio.nagoya-u.ac.jp/labhp/life2/index.html