TOP   >   化学   >   記事詳細

化学

2023.06.02

分子の自己集合プロセスを多段階で制御することに成功 ―分子を集めて数百ナノメートルの高次構造を精密合成―

有機合成化学の発展によって、新しい分子や高分子が生み出され続けています。目的とする分子を合成するには、様々な化学反応を駆使して段階的にアプローチします。原料となる分子の狙った位置に選択的に反応させることにより、複雑な分子構造を構築することができます。しかしながら、現在の有機合成化学の技術をもってしても分子のスケール(数ナノメートル程度)を超えて精緻な高次構造を作り出すことは非常に困難です。
一方、分子の自己集合プロセスを使えば、数百ナノメートルにもおよぶ物質(分子集合体)を作り出すことができます。ただし、分子の自己集合プロセスは自発的で、いわば「分子まかせ」の現象なので、有機合成や高分子合成のように段階的に進めたり、複雑な高次構造をつくり出したりすることは困難です。
今回、京都大学・杉安和憲(教授)、佐々木紀彦(博士後期課程学生、現:鳥取大学助教)、物質材料研究機構・竹内正之(グループリーダー)、名古屋大学・内橋貴之(教授)らは共同で、分子の自己集合を多段階で制御することに成功しました。また、化学反応のように、分子集合体の成?や分解にも位置選択性があることを見出しました。このような自己集合プロセスを利用して、分子集合体内部における分子の配列や組成を変え、複雑な高次構造を創出することが可能となりました。
本成果は、2023年6月2日午前0時(日本時間、真夜中)に国際学術誌「Nature Chemistry」にオンライン掲載されました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

自己集合:分子が弱い分子間相互作用(水素結合やファンデルワールス相互作用など)を介して自発的に集合する現象。ボトムアップ的に様々な高次構造を構築できる手法として、ナノテクノロジーや材料科学の分野で注目を集めている。

 

【論文情報】

タイトル:Multistep, site-selective noncovalent synthesis of two-dimensional block supramolecular polymers
著  者:Norihiko Sasaki, Jun Kikkawa, Yoshiki Ishii, Takayuki Uchihashi, Hitomi Imamura, Masayuki Takeuchi & Kazunori Sugiyasu
掲 載 誌:Nature Chemistry    DOI:10.1038/s41557-023-01216-y

 

【研究代表者】

大学院理学研究科 内橋 貴之 教授
https://www.d.phys.nagoya-u.ac.jp