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数物系科学

2023.07.14

宇宙最初の暗黒星雲に見る星々の生と死

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院理学研究科の田村陽一教授、筑波大学数理物質系の橋本拓也助教授らの国際研究チームは、アルマ望遠鏡注1)を用いて宇宙誕生後6億年の時代の若い銀河をこれまでにない高い解像度で捉えることに成功しました。
アルマ望遠鏡がとらえた塵と酸素の電波画像からは、暗黒星雲と散光星雲が互いに入り混じり、また活発な星々の誕生と超新星爆発の衝撃波によってつくられた巨大な空洞「スーパーバブル」と見られる構造があることがわかりました。宇宙初期の天体において星々の生と死に関わる星雲の姿がこれほど精細に捉えられた例はなく、銀河の誕生に関わる重要な手がかりが得られると期待されます。
本研究成果は、2023年7月13日、米国学術雑誌『The Astrophysical Journal (アストロフィジカル・ジャーナル)』に掲載されました。

 

【ポイント】

・アルマ望遠鏡を用いて132億光年彼方の星々の誕生の母体である暗黒星雲と散光星雲を高い解像度でとらえることに成功した。
・暗黒星雲には星々の死の痕跡「スーパーバブル」と見られる構造があった。
・宇宙早期の銀河の成り立ちや星々の生死、宇宙の物質循環の理解につながる。
 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)アルマ望遠鏡(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計、Atacama Large Millimeter/submillimeter Array: ALMA):
欧州南天天文台(ESO)、米国国立科学財団(NSF)、日本の自然科学研究機構(NINS)がチリ共和国と協力して運用する国際的な天文観測施設。アルマ望遠鏡の建設・運用費は、ESOと、NSFおよびその協力機関であるカナダ国家研究会議(NRC)および台湾国家科学及技術委員会(NSTC)、NINSおよびその協力機関である台湾中央研究院(AS)と韓国天文宇宙科学研究院(KASI)によって分担されます。 アルマ望遠鏡の建設と運用は、ESOがその構成国を代表して、米国北東部大学連合(AUI)が管理する米国国立電波天文台が北米を代表して、日本の国立天文台が東アジアを代表して実施します。合同アルマ観測所(JAO)は、アルマ望遠鏡の建設、試験観測、運用の統一的な執行および管理を行なうことを目的とします。

 

【論文情報】

雑誌名:The Astrophysical Journal
論文タイトル:The 300 parsec resolution imaging of a z = 8.31 galaxy: Turbulent ionized gas and potential stellar feedback 600 million years after the Big Bang
著者:Yoichi Tamura et al.     
DOI: 10.3847/1538-4357/acd637
URL: https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/acd637

 

【研究代表者】

大学院理学研究科 田村 陽一 教授
https://www.a.phys.nagoya-u.ac.jp