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医歯薬学

2023.09.04

魚の過剰な摂取がもたらす血液中ヒ素増加と高血圧のリスク

名古屋大学大学院医学系研究科環境労働衛生学分野の香川匠 大学院生・田崎啓講師・加藤昌志 教授(責任著者)と予防医学分野の田村高志 講師・若井建志 教授、藤田医科大学医学部衛生学の大神信孝 教授・Tingchao He 助手等の研究グループは、食生活・血液中のヒ素・高血圧の関係について新たな知見を報告しました。
「今日の食事は何にしよう?」と考えるとき、魚を選ぶ方も多いのではないでしょうか。魚は美味しいだけでなく、栄養面でも私たちの食卓で欠かせない存在です。魚にはビタミンやオメガ 3-脂肪酸(DHA や EPA)など、美容や健康をサポートする成分が豊富に含まれています。そんな栄養満点の魚ですが、実はヒ素という元素が多く含まれていることが知られています。ヒ素には、人体に有害なものと無害なものがあり、長らく魚に含まれるヒ素は無害であると考えられてきました。しかし、実際に、どのくらいの頻度で魚を摂取すると、どのようにそのヒ素が健康に影響するのかについては、十分に解明されていませんでした。
本研究グループは、魚の摂取頻度・空腹時における血液中のヒ素濃度・高血圧の関係性を調べる研究を実施しました。日本に住む 2,709 人の一般成人を対象として調査を行った結果、血液中のヒ素レベルが高い人ほど高血圧のリスクが増加することが確認されました。さらに、血液中のヒ素の増加には、魚を頻回に食べることが関係している可能性が示されました。1 日に 1 回以上魚を食べる人は、血液中のヒ素濃度が高まり、高血圧になるリスクが上がる可能性があります。この対策として、名古屋大学大学院医学系研究科環境労働衛生学教室では、ヒ素を吸着できる食器(ドクター食器®️ )の開発にも取り組んでいます。
本研究グループの研究結果は、魚好きで知られる日本の住民が、1 日に 1 回以上のペースで魚を食べ過ぎてしまうと、ヒ素を介して健康に影響する可能性があることを示しています。一方、魚にはヒ素以外の健康に良い成分も豊富に含まれていることは間違いありませんので、結局、「色々な食品を組み合わせてバランスの良い食事を摂ることが健康に良い」ということになるのだと考えています。
本研究の成果は、国際誌「European Heart Journal Open」(2023 年 9 月 4 日付)の電子版に掲載されました。

 

※「ドクター食器®️ 」は国立大学法人東海国立大学機構の登録商標です。

 

【ポイント】

 

・血液中のヒ素の量が多い人は、高血圧になりやすいことがわかりました。
・毎日魚を食べると、血液のヒ素が増えて、高血圧になりやすくなる可能性があります。
・魚には健康によい栄養素も多く含まれるため、摂取の方法や頻度には慎重な検討が必
要です。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【論文情報】

雑誌名:European Heart Journal Open
論文タイトル:Elevated arsenic level in fasting serum via ingestion of fish meat increased the risk of hypertension in humans and mice
著者名・所属名:
Takumi Kagawaa,d, Nobutaka Ohgamia,d,e, Tingchao Hea,d,e, Akira Tazakia,d, Shoko Ohnumad, Hisao Naitoa, Ichiro Yajimaa,d, Dijie Chena,d, Yuqi Denga,d,e, Takashi Tamurab, Takaaki Kondoc, Kenji Wakaib, Masashi Katoa,d,*
Departments of aOccupational and Environmental Health, bPreventive Medicine and cPathophysiological Laboratory Sciences, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan. dVoluntary Body for International Health Care in Universities, Aichi, Japan. eDepartment of Hygiene, Fujita Heath University, School of Medicine, Toyoake, Aichi, Japan.
DOI: 10.1093/ehjopen/oead074

 

English ver.
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_E/research/pdf/Eur_230904en.pdf

 

【研究代表者】

大学院医学系研究科 加藤 昌志 教授
https://nu-hygiene.jimdofree.com/

 

【関連情報】

研究者インタビュー「魚の食べ過ぎ注意…その理由はヒ素!?」(名大研究フロントライン)