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社会科学

2023.11.02

過去の法令を全文検索できるデータベースを公開 ~法制度の移り変わりを調査する出発点に~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院法学研究科の佐野 智也 講師、増田 知子 特任教授、同大学院情報学研究科の外山 勝彦 教授、同大学数理・データ科学教育研究センターの駒水 孝裕 准教授らの研究グループは、明治 19年から平成 29年(1886~2017)までに公布された法律と勅令を全文検索できるデータベースを作成・公開しました。このデータベースは、日本政府の、現在有効な法令データを提供する「e-Gov法令検索」では検索できない過去の法令データを提供するものであり、「e-Gov法令検索」を補完する意味を持ちます。
これまで多くの法学研究において法令や判例情報の調査収集にデータベースを利用する際は、個別の事件処理等を意識した限定的利用が主でした。それを越えて、大規模データを使って政策や法令を俯瞰し、経時的に解析しようという研究は、国内的にも国際的にもほとんど例がありません。
今回の研究成果は、法学・政治学・歴史学における研究の出発点として提供される基礎データの範囲を大きく拡大させ、問題設定方法自体の革新を含め、新しい方法論の確立にも貢献すると予想されます。また、国民や非専門家による法情報へのアクセスを容易にする具体的な試みであり、国民と市民社会が法を調査、理解、活用し、立法に参加する出発点になることが期待されます。

 

【ポイント】

・明治19年から平成29年まで(1886~2017)に公布された法律と勅令を全文検索できるデータベースを作成・公開した。 https://jahis.law.nagoya-u.ac.jp/lawdb/
 ※ユーザー登録無しで広く利用が可能。
・公開した法令データベースは、「e-Gov法令検索」が採用する法令標準XMLスキーマ注1)に準拠してXML文書化されており、「e-Gov法令検索」を補完する意味を持つ。
・データベース化により、法令の連続的変遷を把握し、日本の国家・社会運営の長期的変化を調査することができるようになる。

 
◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 
【用語説明】

注1)法令標準XML※1スキーマ※2
約8,000の日本法令の文書構造を分析・検討して策定された、法令データへのタグ付けのためのXMLスキーマ。 e-Gov法令検索が提供する法令データは、このスキーマに従って構成されている。
※1 XML(Extensible Markup Language):
文章の見た目や構造を記述するためのマークアップ言語。タグを手がかりとすることで、文書を機械処理できる。
※2 XMLスキーマ:
XML文書の構造と内容に関するルールを記述し、制約するもの。対応するアプリケーションを使うことで、定義したルールに沿って書かれているかどうかをチェックすることができる。

 

【論文情報】

学会名:第8回デジタルアーカイブ学会研究大会 (2023年11月10日予定)
タイトル:歴史情報としての法令データベースの構築
著者:佐野智也,外山勝彦,駒水孝裕,増田知子
DOI: https://doi.org/10.24506/jsda.7.s2_s142

学会名:第7回デジタルアーカイブ学会研究大会
タイトル:近代日本の法律・勅令を踏まえた法令標準XMLスキーマの提案
著者:佐野智也, 外山勝彦, 増田知子
DOI: https://doi.org/10.24506/jsda.6.s3_s226

 

【研究代表者】

大学院法学研究科 佐野 智也 講師
https://jahis.law.nagoya-u.ac.jp/

 

【関連情報】

インタビュー記事「『過去』の法令データベースがなぜ必要か?」(名大研究フロントライン)