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医歯薬学

2023.11.24

抗真菌薬「ミカファンギン」は、 コウモリオルソレオウイルスの細胞外放出を抑制する

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院生命農学研究科の本道 栄一 教授、勝田 哲史(2022年度修士課程修了)、飯田 敦夫助教、名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM)の佐藤 綾人 特任准教授、角房 直哉 技術員らの研究グループは、コウモリを自然宿主とし、ヒトに急性呼吸器疾患を引き起こすコウモリオルソレオウイルス(PRV)に対する効果的な薬剤を新たに発見しました。
本ウイルス感染症には効果的な薬剤やワクチンは開発されておらず、今後の大規模発生に備えた対策が必要でした。本研究で発見した薬剤は、既にヒトへの使用が米国で認可されている2,943種類の薬剤のスクリーニングによって明らかになったものであり(ドラッグ・リポジショニング注2))、将来、PRVのパンデミックが起こった際には、初動の薬剤となる候補としてその貢献が期待できます。
本研究成果は、2023年11月10日付Elsevier社 「Virus Research」誌の電子版に掲載されました。

 

【ポイント】

・コウモリオルソレオウイルス(PRV)は、ヒトに急性呼吸器疾患を引き起こすが、有効な治療法が見つかっていない。

・FDA(米国食品医薬品局)認証の2,943薬剤の中から、PRVに効果のある薬剤をスクリーニング。

・抗真菌薬「ミカファンギン」注1)は、ヒト肺がん由来の細胞(A549)においてPRVの細胞外放出を抑制した。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)抗真菌薬「ミカファンギン」:

カビの一種、カンジダ症などの治療に用いられる。

注2)ドラッグ・リポジショニング: 

作用、効果、安全性などが既に明らかになっている薬剤から、別の薬効を見つけ、他の疾患の治療に役立てようとする薬剤の開発法。対象の薬剤に、既に安全性が確認されていることから、開発までの費用と時間が大幅に削減できる利点がある。

 

【論文情報】

雑誌名: Virus Research

論文タイトル: Antiviral Effects of Micafungin against Pteropine Orthoreovirus, an Emerging Zoonotic Virus Carried by Bats

著者: Eiichi Hondo(名大)*、 Tetsufumi Katta(名大修士修了)*、Ayato Sato(名大)、Naoya Kadofusa(名大)、Tomoki Ishibashi(理研)、Hiroshi Shimoda(山口大)、Hirokazu Kato(岡山大)、Atsuo Iida (名大) *: equally contributed  

DOI: 10.1016/j.virusres.2023.199248

URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0168170223002101

 

【研究代表者】

大学院生命農学研究科 本道 栄一 教授

https://sites.google.com/view/animal-morphology