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医歯薬学

2024.03.15

難病の治療に新たな一手! ドラベ症候群の進行性歩行障害に対するレボドパの有用性をランダム化クロスオーバー試験で検証

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院医学系研究科障害児(者)医療学寄附講座の夏目 淳(なつめ じゅん、責任著者)特任教授、小児科学の鈴木 健史(すずき たけし、筆頭著者)大学院生(研究当時)、伊藤 祐史(いとう ゆうじ)医員、髙橋 義行(たかはし よしゆき)教授、愛知県三河青い鳥医療療育センター三次元動作解析室の伊藤 忠(いとう ただし)研究員、整形外科の則竹耕治(のりたけ こうじ)センター長らの研究グループは、ドラベ症候群の進行性歩行障害に対するレボドパの有用性を世界で初めて検証し報告しました。
ドラベ症候群は 2-4 万人に 1 人の有病率と言われる指定難病で、主要症状であるてんかん発作の他に、知的障害や進行性の歩行障害を呈します。歩行障害は生活の質に大きく関わりますが、これまで確立した治療法がありませんでした。本研究では、ドラベ症候群患者の歩行を、三次元歩行解析という手法で定量的に評価し、レボドパが歩行の改善に有効であることをランダム化クロスオーバー試験で証明しました。この結果は歩行に困難を感じている患者へのサポートになるだけでなく、いまだ不明な点の多いドラベ症候群での運動障害の病態解明にもつながることが期待されます。また、これまで客観的な評価の難しかった「歩行の改善」を定量的に評価することが可能となったことで、他の疾患の治療法の開発にもつながっていく可能性があります。
本研究成果は、2024 年 3 月 12 日付で、国際抗てんかん連盟(ILAE)の公式雑誌である医学雑誌『Epilepsia』に掲載されました。

 

【ポイント】

・ドラベ症候群*1 は有熱時のけいれん重積を特徴とする難治発達性てんかん性脳症であり、思春期以降には進行性の歩行障害を呈します。
・三次元歩行解析による歩行の定量的な評価を行い、ランダム化クロスオーバー試験でドラベ症候群の歩行障害に対するレボドパ*2 の有効性を検証しました。
・9 名が組み入れられた試験でレボドパは歩容の包括的指標である Gait Deviation Index*3 や6 分間歩行距離などを統計学的に有意に改善することが示されました。
・サブグループ解析の結果、レボドパは年齢が若く、歩行能力が比較的保たれている症例でより有効であり、歩行障害が軽度の時期から治療介入することが必要と考えられました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

*1)ドラベ症候群:乳児期に発症する指定難病の 1 つです(指定難病 140)。有熱時にけいれんしやすいため熱性けいれんとの区別が問題になることがありますが、入浴でもけいれんが誘発されるような非常に高い熱感受性を持ち、けいれんが重積(長く続く)しやすいことを特徴とします。難治のてんかん発作だけでなく、知的障害や運動失調なども伴います。
*2)レポドパ:パーキンソン病の治療などで広く使用されている薬剤です。脳内でドパミンという神経伝達物質に変換されて作用します。
*3)Gait Deviation Index:三次元歩行解析の結果得られる指標の一つで、歩容の包括的な指標です。100 が健常児平均となり、高いほど平均的な歩き方に近いことを意味しています。

 

【論文情報】

雑誌名: Epilepsia
論文タイトル: Effect of levodopa on pathological gait in Dravet syndrome: A randomized crossover trial using three-dimensional gait analysis.
著者名・所属名: Takeshi Suzuki1, Jun Natsume1,2, Yuji Ito3, Tadashi Ito4, Koji Noritake5, Fumie Kinoshita6, Tatsuya Fukasawa7, Takeshi Tsuji8, Kazuya Itomi9, Hirokazu Kurahashi10, Kazuo Kubota11, Tohru Okanishi12,13, Shinji Saito14, Hideshi Sugiura15, Hirohisa Watanabe16, Yoshiyuki Takahashi1,
and Hiroyuki Kidokoro1
1 Department of Pediatrics, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan
2 Department of Developmental Disability Medicine, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan
3 Department of Pediatrics, Aichi Prefectural Mikawa Aoitori Medical and Rehabilitation Center for Developmental Disabilities, Okazaki, Japan
4 Three-dimensional motion analysis room, Aichi Prefectural Mikawa Aoitori Medical and Rehabilitation Center for Developmental Disabilities, Okazaki, Japan
5 Department of Orthopedic Surgery, Aichi Prefectural Mikawa Aoitori Medical and Rehabilitation Center for Developmental Disabilities, Okazaki, Japan
6 Department of Advanced Medicine, Nagoya University Hospital, Nagoya, Japan
7 Department of Pediatrics, Anjo Kosei Hospital, Anjo, Japan
8 Department of Pediatrics, Okazaki City Hospital, Okazaki, Japan
9 Department of Neurology, Aichi Children's Health and Medical Center, Obu, Japan.
10 Department of Pediatrics, Aichi Medical University, Nagakute, Japan
11Department of Pediatrics, Gifu University Graduate School of Medicine, Gifu, Japan.
12 Department of Child Neurology, Comprehensive Epilepsy Center, Seirei Hamamatsu General Hospital, Hamamatsu, Japan.
13 Division of Child Neurology, Institute of Neurological Sciences, Tottori University School of Medicine, Yonago, Japan.
14 Department of Pediatrics and Neonatology, Nagoya City University Graduate School of Medical Sciences, Nagoya, Japan.
15 Department of Physical Therapy, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan
16 Department of Neurology, Fujita Health University School of Medicine, Toyoake, Japan.

 

DOI: 10.1111/EPI.17888

 

 

English ver.
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_E/research/pdf/Epi_240315en.pdf

 

【研究代表者】

大学院医学系研究科 夏目 淳 特任教授
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_J/laboratory/endowed-chair/developmental-disability/