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化学

2024.05.20

Ser/Leu入換え遺伝暗号の開発 ~遺伝子組み換え時のバイオハザードリスクの解消~

名古屋大学大学院工学研究科の村上 裕 教授、藤野 公茂 助教、同大学トランスフォーマティブ生命分子研究所の三城 恵美 特任講師らの研究グループは、セリン(Ser)とロイシン(Leu)を入れ換えた遺伝暗号を持つ無細胞翻訳系を開発しました。
 Ser/Leu入換え遺伝子を設計することで、Ser/Leu入換え遺伝暗号を持つ翻訳系では正しく目的のタンパク質へと翻訳合成される一方で、普遍遺伝暗号注2)を持つ通常の生物では不活性となる、バイオハザードリスクの無い遺伝子の設計が可能になります。本研究では、相互にアンチコドンを入れ換えたキメラtRNAと、一部のtRNAを欠失した天然tRNAのハイブリッドを使用することで、Ser/Leu入換え遺伝暗号を簡便に構築し、入換え遺伝子から機能性タンパク質の合成に成功しました。
 本研究で開発したSer/Leu入換え遺伝暗号に基づく無細胞翻訳系は、遺伝子漏洩に伴うバイオハザードリスクの無いタンパク質合成系として、今後の利用が期待されます。また、この翻訳系は、Ser/Leu入換え遺伝暗号を持つ新たな生物のモデルとなると考えられています。
本研究成果は、2024年5月16日付イギリス科学雑誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。

 

【ポイント】

 ・セリン(Ser)とロイシン(Leu)を入れ換えた遺伝暗号を持つ無細胞翻訳系注1)を開発

・遺伝子漏洩に伴うバイオハザードリスクの無い安全なタンパク質合成

・Ser/Leu入換え遺伝暗号を持つ新たな生物のモデル

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)無細胞翻訳系:
試験管内で行われる翻訳(タンパク質の生合成)反応系。
注2)普遍遺伝暗号:
ほぼ全ての生物が共通して使用している遺伝暗号。

 

【論文情報】

雑誌名:Nature Communications
論文タイトル:Ser/Leu-swapped cell-free translation system constructed with natural/in vitro transcribed-hybrid tRNA set
著者:藤野公茂1, 園田凌吾1, 東長田泰斗1, 三城恵美2, 加納圭子2, 村上裕1,3*
1名古屋大学大学院工学研究科生命分子工学専攻
2名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所分子構造センター
3名古屋大学未来社会創造機構ナノライフシステム研究所
*責任著者
DOI: 10.1038/s41467-024-48056-z
URL: https://www.nature.com/articles/s41467-024-48056-z

 

【研究代表者】

大学院工学研究科 村上 裕 教授

http://www.chembio.nagoya-u.ac.jp/labhp/bioanal2/index.html