名古屋大学大学院工学研究科の部矢 明 准教授(研究代表者)、鮎澤 颯 博士前期課程学生、井上 剛志 教授、電気通信大学大学院情報理工学研究科の仲田 佳弘 准教授、鍋屋バイテック会社の研究グループは、少数部品構成で高伝達力となる「磁気ねじ」のための磁気回路構造注4)を提案し、本「磁気ねじ」を用いた可動域を理論上無限に延長可能なモジュール型磁気「送りねじ」機構を新たに開発しました。
広い可動域を実現する場合、長いねじ軸ではたわみが生じるため、複数のねじ軸を連結する方法が考えられます。しかし、連結部をナットが円滑に通過するために、ねじ山が連続する精度の良い連結か、ガタを許容する設計が必要でした。
そこで部矢准教授らは、物理的接触ではなく磁力によって非接触で動力を伝達する「磁気ねじ」に着目しました。この方法では、ねじ軸とナットが物理的にかみ合う必要が無いため、精度の向上やガタの許容が必要なく、ねじ軸の連結部でもスムーズにナットが通過できます。また、従来の磁気ねじが多数の小片磁石をらせん配置するなど複雑な構造を持つのに対し、少数の部品で高い伝達力を持ちます。この新しい構造では、「磁束集中構造」と呼ばれる強い磁力を生み出す構造を採用することで高伝達力化が達成されています。
磁気ねじは、ねじ軸・ナット間が非接触のため摩擦による発熱がなく、高速な往復運動が可能です。また、潤滑油が不要でクリーンであり、メンテナンスが容易です。本提案機構は、半導体や食品・医薬品分野での安全な搬送・位置決め装置をはじめとした様々な機械の新しい設計解となり得ます。
本研究成果は、2024年6月19日(水)~21日(金)に開催される機械要素技術展[東京]で展示されます。
・少数部品構成で強い磁力を生む新しい磁束集中構造注1)により、高伝達力を持つ「磁気ねじ」注2)を開発。
・磁気ねじの連結により、超長ストローク化が可能なモジュール型磁気「送りねじ」注3)機構を開発。
・ねじ軸・ナット間の潤滑無しで高速・低振動な動作が可能。過負荷に対して柔軟に応答可能。
・潤滑不要でクリーンなため、半導体や食品・医薬品分野での安全な搬送・位置決め装置として期待。
動画による研究紹介
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注1)磁束集中構造:
複数の永久磁石を並べて配置する際に、それらの着磁方向を工夫することで磁束を集中させる構造。
注2)磁気ねじ:
磁力によって動力を伝達する送りねじ。
注3)送りねじ:
回転運動を直線運動に変換する機械要素。搬送・位置決め機構として、半導体製造装置や産業用ロボットなど様々な機械で使用されている。一般に使われている送りねじは機械式で、ねじ軸とナットで構成され、両者のねじ山の接触もしくは、両者の中間で転がるボールを介した接触により、動力が伝達される。
注4)磁気回路構造:
磁石と磁気材料から構成される構造で、磁力を効率よく集中させることで強い磁力を得る。
展示会名:機械要素技術展 [東京]
展示時間:2024年6月19(水)~21日(金) 10:00~18:00(最終日のみ17:00終了)
ブース番号:東3ホール E22-18(総合ブース)
学会名:第36回「電磁力関連のダイナミクス」シンポジウム
講演日:2024年6月26日(水)
講演タイトル:磁束集中型磁気ねじの提案
発表者:鮎澤 颯1,*部矢 明1,仲田 佳弘2,間宮 寿明3,井上 剛志1
1名古屋大学,2電気通信大学,3鍋屋バイテック会社
大学院工学研究科 部矢 明 准教授
https://www.akira-heya.net/
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