数物系科学
2024.07.12
XENONnT実験での太陽ニュートリノによる原子核散乱事象の測定結果
名古屋大学素粒子宇宙起源研究所(KMI)はじめ、名古屋大学宇宙地球環境研究所、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU, WPI)、東京大学宇宙線研究所、神戸大学が参加する、米国・欧州・日本を中心とした国際共同実験XENONコラボレーションは、現在稼働している暗黒物質探索実験であるXENONnT(ゼノンエヌトン)実験において、太陽で生成されたニュートリノとキセノン原子核の散乱をはじめて観測しました。本結果は、イタリア・ラクイラで開催されている国際会議「IDM2024」で日本時間7月10日に報告されました。
太陽で生成されるニュートリノとキセノン原子核の散乱事象は、微弱かつ非常に稀な現象であるため、高感度・大質量の検出器を使った長期の測定による観測が必要です。世界をリードする暗黒物質探索実験であるXENONnT実験の検出器は、大型の液体検出器でありながら、優れた検出器性能と背景事象の除去能力を持つため、微弱かつ非常に稀な現象の観測に最適な装置です。XENONnT実験で取得した約3.5トン年のデータを解析した結果、観測した信号が背景事象のみに起因する確率が0.35%であるという有意度でニュートリノとキセノン原子核の散乱事象を観測しました。この成果はそれ自体が初観測であるだけでなく、暗黒物質探索実験の検出器としての性能の高さを示す重要なマイルストーンと言うことができます。
(名古屋大学の貢献)
本研究には、名古屋大学から伊藤好孝教授(宇宙地球環境研究所ISEE・素粒子宇宙起源研究所KMI・高等研究院IAR)、風間慎吾准教授(KMI)、小林雅俊特任助教(KMI)が参加しています。
名古屋大学のグループはキセノン純化装置および中性子反同時検出装置の運転に関して貢献したほか、小林特任助教が低エネルギー電子反跳事象に関する解析の責任者を務め、今回のニュートリノ探索でも主なバックグラウンドのひとつである電子反跳バックグラウンドの推定に貢献しています。
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