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化学

2024.08.08

溶かさない界面活性剤で極限薄膜材料を自在設計 ~達成困難だった多様なアモルファスナノシートの合成に成功~

名古屋大学未来材料・システム研究所の山本 瑛祐 助教と長田 実 教授らの研究グループは、従来は溶解させたまま活用する界面活性剤を金属イオンと共にあえて析出させて、固体の結晶として鋳型利用することで、多様なアモルファスナノシートの合成に成功しました。
近年、アモルファスナノシートが最先端材料として注目を集めていますが、その多くは厚いものであり、分子レベルの厚みのアモルファスナノシートが合成できるのは、限られたごく一部の組成の材料に限定されていました。
本技術では「溶かさない界面活性剤結晶」の隙間にある、原子レベルの薄さの均一な二次元空間を金属種の反応場として利用することで、多様なナノシートを作り出すことができます。今回の研究でAl, Sc, Cr, Mn, Fe, Co, Ga, Rh, In, Ceなどを含む多様なナノシートを合成できるようになりました。
本技術で合成した新しい材料群は、二次元材料やアモルファス材料の新しい科学の潮流を切り開くことが期待されます。
本研究成果は、2024年8月4日付国際誌『Nature Communications』に掲載されました。

 

【ポイント】

・通常は溶かして使う界面活性剤注1)をあえて金属イオンと共に固体の結晶として析出させて、鋳型として活用。
・厚みが1nm程度の酸化物やオキシ水酸化物のアモルファス注2)ナノシート注3)の汎用的な合成方法を開発。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)界面活性剤:
洗剤などによく利用される、分子内に親水的な官能基と疎水的な官能基を有する両親媒性物質。
注2)アモルファス:
結晶構造に長距離規則性が無く、無秩序な構造を有する状態。
注3)ナノシート:
原子1層、数層からなる物質。代表的な物質として、グラフェン、六方晶BN、遷移金属カルコゲナイド(MoS2、WS2など)がある。

 

【論文情報】

雑誌名:Nature Communications
論文タイトル:Solid-state surfactant templating for controlled synthesis of amorphous 2D oxide/oxyhydroxide nanosheets
著者:山本瑛祐 (助教), 栗本大輝 (研究当時 大学院生), 伊東健太郎(大学院生), 林浩平(研究当時 大学院生), 小林亮(准教授), 長田実(教授)
DOI: 10.1038/s41467-024-51040-2.
URL: https://www.nature.com/articles/s41467-024-51040-2

 

【研究代表者】

未来材料・システム研究所 長田 実 教授山本 瑛祐 助教
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