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化学

2024.08.22

分子サイズのデバイス開発を目指して数ナノメートルの分子導線で高い電気伝導特性を実現! ―ホッピング伝導を高効率化する新しい分子設計―

大阪大学産業科学研究所の家裕隆教授は、大阪大学大学院基礎工学研究科の夛田博一教授、山田亮准教授、名古屋大学大学院工学研究科の大戸達彦准教授らと共同で、ホッピング伝導※2向上の鍵となる物理的パラメーター“再配列エネルギー※3”を調節した分子設計を取り入れたπ共役分子※4を開発することで、数ナノメートルスケールの分子導線の単分子電気伝導特性を向上させることに成功しました。
本研究成果は、8月12日(月)(日本時間)に、アメリカ化学会誌 『Journal of the American Chemical Society』 (オンライン)に掲載されました。

 

【ポイント】

◆ 均等の間隔でねじれた数ナノメートルスケールの分子導線の開発に成功
◆ 剛直な分子構造を用いることで高い電気伝導を実現
◆ 単分子エレクトロニクス※1や有機薄膜エレクトロニクスの高性能化に期待

 

◆詳細(和文プレスリリース本文)はこちら
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【用語説明】

※1 単分子エレクトロニクス
1974年にAviramとRatnerは、有機単分子に電子素子としての機能を付与することができれば“単分子エレクトロニクス”が可能になると提唱。単分子エレクトロニクスでは、構造変換が自在に行える有機分子の特徴を活かせることから、ボトムアップのアプローチで素子構築が可能となる。

 

※2 ホッピング伝導
局在した電荷が分子内を移動する、電荷注入型の輸送機構のこと。熱活性型の伝導であるため温度依存が観測される。電気抵抗の距離依存性は直線的になることが特徴。

 

※3 再配列エネルギー
分子の電子移動に関するエネルギーであり、基底状態の構造と酸化あるいは還元された励起状態の構造とのエネルギー差のこと。一般的に、再配列エネルギーが小さいほど、電子移動が効率的になりやすく、高い電荷移動性が期待できる。

 

※4 π共役分子
ベンゼンやアセチレンなど分子内でπ電子が連続的に広がり、結合している分子のことを指す。このような分子では、複数の二重結合や三重結合によって、π電子が分子全体にわたって自由に移動できる状態を形成しており、正孔や電子の輸送に有利であることからエレクトロニクス応用に適した構造である。

 

【論文情報】

本研究成果は、2024年8月12日(月)(日本時間)にアメリカ化学会誌 『Journal of the American Chemical Society』(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Periodically Twisted Molecular Wires Based on a Fused Unit for Efficient Intramolecular Hopping Transport”
著者名:Ryo Asakawa, Soichi Yokoyama, Ryo Yamada, Seiya Maeda, Tatsuhiko Ohto, Hirokazu Tada, and Yutaka Ie
DOI:https://doi.org/10.1021/jacs.4c07548


【研究代表者】

大学院工学研究科 大戸 達彦 准教授
https://sites.google.com/view/cmsm-kimizlab