名古屋大学大学院工学研究科の清水 一憲 准教授、永井 研迅 博士後期課程学生(兼:サントリーウエルネス株式会社研究員)、本多 裕之 教授らの研究グループは、サントリーウエルネス株式会社生命科学研究所との共同研究で、ケルセチンが筋持久力を増加させる可能性を新たに発見しました。
筋持久力は、疲労耐性やパフォーマンス能力に関与しており、心血管リスクや死亡率に関連することが報告されています。骨格筋を構成する筋線維は大きく速筋注5)線維と遅筋線維に分けられます。特に遅筋線維は持久力に寄与することが知られています。ケルセチンは玉ねぎやブロッコリーなどに含まれ、様々な食品から摂取されている成分かつ、多様な生理活性が報告されているポリフェノールです。本研究では、ケルセチンがヒト由来骨格筋細胞の遅筋線維を増加させ、筋持久力をはじめとする遅筋様の表現型を誘導することを、2次元培養および独自デバイスを用いた3次元培養で明らかにしました。
本研究は、一般的に食されてきたケルセチンがヒト由来骨格筋細胞の遅筋線維増加および筋持久力を向上することを示した初めての研究成果であり、ケルセチンがパフォーマンス向上に寄与することが期待されます。
本研究成果は、2024年8月19日付で米国実験生物学会連合の国際誌『The FASEB Journal』に掲載されました。
・ケルセチン注1)が、初代ヒト骨格筋細胞の遅筋注2)線維を増加させることを見出した。
・ケルセチンが、筋持久力注3)を増加させることを見出した。
・独自のマイクロデバイス注4)を用いた収縮力評価系が、筋収縮特性に対する食品成分の
評価に利用できることを示した。
◆詳細(プレスリリース本文)はこちら
注1)ケルセチン:
玉ねぎやブロッコリーなどの様々な野菜や果物に含まれ、多様な生理活性を示すことが報告されているポリフェノール。
注2)遅筋:
持久力が高く、長時間の有酸素運動に適している筋肉。例えば、マラソンや長距離ランニングで主に使われる。収縮速度は遅いが、疲労しにくい特徴がある。
注3)筋持久力:
筋肉が繰り返し収縮し続ける能力。
注4)独自のマイクロデバイス:
シリコーンの一種であるPDMS(ポリジメチルシロキサン)で作製した筋収縮などが測定可能な独自のデバイス。
注5)速筋:
瞬発力が高く、短時間の高強度運動に適している筋肉。例えば、スプリントやウエイトリフティングで主に使われる。収縮速度は速いが、疲労しやすい特徴がある。
雑誌名:The FASEB Journal
論文タイトル:Quercetin induces a slow myofiber phenotype in engineered human skeletal muscle tissues
著者:永井 研迅1,2, 金田 喜久1, 出雲 貴幸1, 中尾 嘉宏1, 本多 裕之2, 清水 一憲2
1サントリーウエルネス株式会社 生命科学研究所
2名古屋大学大学院 工学研究科
DOI: https://doi.org/10.1096/fj.202400914RR
URL: https://faseb.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1096/fj.202400914RR
大学院工学研究科 清水 一憲 准教授
https://www.chembio.nagoya-u.ac.jp/labhp/life2/index.html
~名大研究フロントライン~筋肉の三次元培養に見惚れました!工学技術を用いた食品成分の機能評価