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生物学

2024.11.05

Fish that fish for fish ~サカナを釣る魚の特異な"釣り運動ニューロン"を発見~

名古屋大学大学院生命農学研究科の山本 直之 教授、萩尾 華子 特任助教(高等研究院YLC教員)、西野 弘嵩 氏(当時博士前期課程学生)、中山 友哉 特任助教(高等研究院YLC教員)らの研究グループは、カエルアンコウが小魚をおびき寄せるために背鰭(せびれ)が変化した“釣竿”と“ルアー”を動かすニューロンを発見し、“釣り運動ニューロン”と命名しました。脊髄において、釣り運動ニューロンは他の背鰭の運動ニューロンとは全く異なる場所にあることを明らかにしました。胸鰭と体幹筋の運動ニューロンの分布についても明らかにしました。
鰭(ひれ)の運動ニューロンの研究報告はわずかであり、本研究では4つの背鰭すべてと胸鰭、体幹筋の運動ニューロンを調べたことに加え、機能の進化に伴う鰭運動ニューロンの移動を明らかにした画期的研究です。カエルアンコウはユーモラスな姿で人気があり、釣り行動もよく知られています。知的好奇心という観点からも、釣り行動に関する新しい知見を提供した意義は大きいと言えます。ヒトには背鰭に相当する構造はありませんが、胸鰭と腹鰭は我々の手足に相当します。鰭の運動系の理解を通じて、四肢動物との比較検討による鰭/四肢を使った運動の進化の理解にも貢献が期待されます。
本研究成果は、2024年10月8日付の神経形態学分野で最も著名な雑誌『Journal of Comparative Neurology』に掲載されました。

 

【ポイント】

・カエルアンコウは背鰭(せびれ)を4つ持っており、第2、第3、第4背鰭は威嚇や遊泳に使う。第1背鰭は釣り竿のような棒で、皮膚が変化したゴカイのような“ルアー”が付いている。これを振って小魚をおびき寄せて捕食する。この行動を“釣り行動”と名付けた。
・カエルアンコウの脊髄において第1背鰭を動かす “釣り運動ニューロン”(“fishing motoneuron”)を発見し、第2、3、4背鰭の運動ニューロンとは全く異なる場所にあることを明らかにした。
・もともとは背鰭の運動ニューロンでありながら、本来の機能と全く異なる役割を果たすために分布場所が移動したと考えられる、極めて稀な例である。


◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【論文情報】

雑誌名:Journal of Comparative Neurology
論文タイトル:Fish That Fish for Fish?A Peculiar Location of “Fishing Motoneurons” in the Striated Frogfish Antennarius striatus
著者:Hanako Hagio§1,2, Hirotaka Nishino§1, Kenta Miyake1, Nene Sato1, Kei Sawada1, Tomoya Nakayama1, Naoyuki Yamamoto*1.
§共筆頭著者 *責任著者
(萩尾華子、西野弘嵩、三宅健太、佐藤寧々、沢田慧、中山友哉、山本直之)
1:名古屋大学大学院生命農学研究科動物科学専攻水圏動物学研究室Laboratory of Fish Biology, Department of Animal Sciences, Graduate School of Bioagricultural Sciences, Nagoya University, Nagoya, Japan
2:名古屋大学高等研究院 Institute for Advanced Research, Nagoya University, Nagoya, Japan
DOI:10.1002/cne.25674                                       
URL:https://doi.org/10.1002/cne.25674

 

【研究代表者】

大学院生命農学研究科 山本 直之 教授
https://fish-biology-nu.wixsite.com/fish-biology-nu