TOP   >   工学   >   記事詳細

工学

2024.11.08

世界初!MRI・CT内で動く、球状歯車型空圧モータを開発

名古屋大学大学院工学研究科の部矢 明 准教授、森田 希 博士前期課程学生、井上 剛志 教授の研究グループは、MRI・CT内やその周辺で針等の医療器具や検査用センサを遠隔操作により姿勢変更・位置決め可能な、世界初の球状歯車型空圧モータを開発しました。
MRI・CT画像を見ながら針を刺すのみでがん治療や病変採取等を行う画像下治療注2)は、患者へのダメージが小さいため、高齢化も相まってニーズが高まっています。しかし、MRI・CT内は狭く、アプローチが困難な場合があります。また、MRIは強磁場による金属の吸引事故の危険性があり、CTはX線により患者だけでなく医師も被ばくします。そして撮像面に金属があると画質劣化が起こります。そのため、術者が手術室外から遠隔操作する非金属性手術支援ロボットが開発されていますが、針の姿勢変更機構では複数の空圧モータ注3)を組み合わせるため、構造の大型化が課題となります。
そこで部矢准教授らは、1台で様々な方向への回転を実現する球状歯車型空圧モータを開発しました。空圧力で様々な方向へ回転可能であり、一般的なモータのように鉄や磁石が必要なく、樹脂のみで製作できます。そのため、MRI・CT内部やその周辺でも動作可能であり、撮影画像への影響なく小型機構で医療器具や検査用センサ等の姿勢変更・位置決めが可能です。また、球状歯車を持つ回転子への歯の接触回数で角度が決まり、歯の間隔を狭く設計することで高精度な位置決め動作も可能なため、姿勢測定のための角度センサも不要です。本技術をMRI・CT環境で動く遠隔操作ロボットに応用することで、従来機構の小型軽量化と高精度化の実現が期待できます。本研究成果は、2024年11月8日~10日に東京科学大学で開催される第33回日本コンピュータ外科学会大会で発表(発表は9日)されます。

 

【ポイント】

・1台で様々な方向へ回転:球状歯車注1)を持つ1回転子が様々な方向へ回転するため、針等の医療器具や検査用センサを小型機構により遠隔操作で姿勢変更・位置決め可能。
・樹脂のみで製作可能:空圧によって複数の歯を球状歯車へ押し当てて回転するため、一般的なモータのように鉄や永久磁石・電磁石が必要なく、樹脂で製作可。
・MRI・CT内や周辺での動作に適する:樹脂のみで製作できるため、強磁場環境であるMRI内・周辺でも動作可能。人の入ったMRI・CT内は狭く、さらに撮像面に金属が存在すると撮影画像にノイズが発生する。しかし、1台で2個のモータの役割を果たすため小型であり、樹脂で製作すればノイズが発生しないためMRI・CT環境に適する。
・角度センサ不要:球状歯車への歯の接触回数で角度が決まる原理より、角度センサ不要。


<研究紹介動画>

 
 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)球状歯車:
球形状の歯車。
注2)画像下治療:
画像診断装置で体の中を透かして見ながら、医療器具を用いて治療する治療法。
注3)空圧モータ:
圧縮空気のエネルギーによって回転運動を行うモータ。

 

【学会情報】

学会名:第33回日本コンピュータ外科学会大会(2024年11月8日~10日)
講演日:2024年11月9日(土)
講演タイトル:MRI・CT画像下治療のための2自由度空圧ステッピングモータの動作検証
発表者:森田 希、部矢 明*、井上 剛志 *研究代表者

 

【研究代表者】

大学院工学研究科 部矢 明 准教授
https://www.akira-heya.net/

 

【関連情報】

20241004heya_R.JPG ~Researchers' VOICE~No.52 部矢 明准教授に一問一答!