名古屋大学大学院環境学研究科の松井 仁志 准教授と河合 慶 研究員は、北海道大学低温科学研究所と国立極地研究所との共同研究で、北極域の温暖化によって北極ダスト(北極の陸域から大気中に放出される鉱物を主成分とする微粒子)の放出量が増加し、その増加が北極域の広い範囲で雲の中の氷晶形成を促進させることを気候モデルの数値シミュレーションによって明らかにしました。これは、北極域の下層雲において、気温上昇によって氷晶の形成が起きにくくなり、水滴の割合が増加するとされてきた従来の理解を修正する新たな発見です。北極ダストとその温暖化による変化は、現在ほとんどの気候モデルでは考慮されていないため、これらの過程を考慮することで、北極下層雲における氷晶形成や放射収支の長期的な変化をより正確に予測できるようになり、北極域の気候変動予測の精度向上につながっていくことが期待されます。
本研究成果は、2024年11月1日付で気候科学分野の国際学術誌「npj Climate and Atmospheric Science」に掲載されました。
本研究は、日本学術振興会・科学研究費助成事業、環境省・環境再生保全機構の環境研究総合推進費、文部科学省・北極域研究加速プロジェクトなどの支援のもとで行われたものです。
・北極域の温暖化によって北極ダスト(北極の陸域から大気中に放出される鉱物を主成分とする微粒子)の放出量が増加し、その増加が北極域の広い範囲で雲の中の氷晶形成を促進させることを解明した。
・この結果は、北極域の下層雲において、気温上昇によって氷晶の形成が起きにくくなるとされていた従来の理解を修正する新たな発見である。
・北極ダストとその増加は、現在ほとんどの気候モデルでは考慮されていない。これらの過程を考慮することで、北極域の下層雲の氷晶形成・放射収支などの気候変動予測の精度向上につながっていくことが期待される。
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雑誌名:npj Climate and Atmospheric Science
論文タイトル: Increasing Arctic dust suppresses the reduction of ice nucleation in the Arctic lower troposphere by warming
著者:松井 仁志 (名古屋大学大学院環境学研究科・未来社会創造機構 脱炭素社会創造センター)
河合 慶 (名古屋大学大学院環境学研究科)
當房 豊 (国立極地研究所・総合研究大学院大学)
飯塚 芳徳 (北海道大学低温科学研究所)
的場 澄人 (北海道大学低温科学研究所)
DOI: 10.1038/s41612-024-00811-1
URL: https://www.nature.com/articles/s41612-024-00811-1