名古屋大学大学院工学研究科の長野 方星 教授、渡邉 紀志 特任准教授、佐々木純 博士前期課程らの研究グループは、ポーライト株式会社との共同研究で、厚さわずか0.3 mmで10W(10 W/cm2)の高熱フラックスに対応可能な「超薄型ループヒートパイプ」の開発に成功しました。
ループヒートパイプはウィックと呼ばれる多孔質体(スポンジ構造)で生じる毛細管現象をポンプの駆動力に利用することで、電力を使用せずに半永久的に熱を輸送できる受動的冷却技術です。
今回開発された超薄型ループヒートパイプは、2枚の銅箔をエッチング加工で流路を形成した後、銅粉末を焼結したウィックを組み込み、レーザー溶接により高精度かつ高強度に一体化されています。冷媒として水を使用し、充填率の異なる複数条件下で動作性能を評価しました。また、モバイル機器への搭載を見据えて、水平方向に加えて上下・縦横方向の姿勢でも特性評価を実施し、いずれの姿勢においても10Wの熱を安定して輸送できることを確認しました。
本デバイスの熱輸送能力は熱伝導性の高い銅の約45倍、グラファイトシートの約10倍高いことが明らかとなり、極薄ながら高い放熱能力を有することが実証されました。これにより、スマートフォンやタブレットなどの小型・薄型電子機器における熱マネージメント技術の高度化に寄与することが期待されます。
本研究成果は、2025年3月24日付Elsevier B.V.の発行する学術雑誌『Applied Thermal Engineering』に掲載されました。
・世界最薄(厚さ0.3 mm)の熱輸送デバイス「ループヒートパイプ(UTLHP)」を開発。
・1 cm2あたり10 Wの高熱フラックスに対応し、全方向で安定動作。
・スマートフォンなどの次世代小型・薄型電子機器の放熱デバイスとして期待。
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雑誌名:Applied Thermal Engineering
論文タイトル:Development of a 0.3 mm ultra-thin loop heat pipe for 10 W heat dissipation in thin mobile devices
著者:Jun Sasaki(博士前期課程), Noriyuki Watanabe(特任准教授), Shinobu Aso(ポーライト(株)), Kazuki Sadakata(ポーライト(株)), Shigeyuki Tanabe(ポーライト(株)), Hosei Nagano(教授)
DOI:10.1016/j.applthermaleng.2025.126230
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1359431125008221